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市場における競争の本質およびその度合いは、次の5つの力ないし力関係によって規定される。すなわち新規参入の脅威、顧客の交渉力、原材料などの財あるいはサービスの供給者の交渉力、(もし存在するならば)代替財あるいはサービスの脅威、および市場における既存企業間で繰り広げられる競合関係の5つである。
そうした競争環境に対処するための戦略的行動計画を構築し、またそうした競争環境の中にあって成長していくためには、企業は競争に影響を及ぼす諸力が市場の中でどのように作用しているか、そして特定の状況下において、それらの力がいかなる影響を及ぼすかについて理解する必要がある。
著者は、本稿において、それらの力がいかなる作用を及ぼすかについて詳述し、それらの力関係への適合方法、そして可能な場合には、それらの力関係の活用方法に関する助言を与えている。
戦略策定の神髄は、市場における競争に対処することにある。しかしながら、我々は競争をあまりにも狭く、悲観的にとらえてしまいがちである。経営者がまったく逆の見解を持っていることを時折耳にするが、市場における熾烈な競争というものは、偶然でもなければ、不運でもないのである。
さらにまた、マーケットシェア争いにおける競争は、単に当該産業にすでに存在する競争企業との間だけに現出するものではない。競争は、その根柢に横たわる経済活動に根差すものであり、競争に影響を及ぼす諸力は、特定市場に根を下ろしている既存企業の枠を越えて存在するものである。市場によってそれぞれの顕在性、能動性の度合いは異なるかもしれないが、顧客、供給者、潜在的参入企業、そして代替財あるいはサービスを生産する企業のすべてが、競争相手なのである。
市場における競争の態様は、図1に示した5つの基本的な力関係によって決まる。そして、これらの5つの力関係の総和が、その産業の収益性を究極的に規定する。競争状態は、タイヤ産業、製缶産業、そして鉄鋼産業の場合のように、どの企業もわずかな投下資本利益率しか上げられないような激しい状態から、油田設備・サービス産業、清涼飲料水産業、そして化粧用品産業の場合のように、各企業が高い投下資本利益率を享受しうる機会のある穏やかな状態まである。
経済学者のいう〝完全競争〟の状態にある市場では、巧みに有利な地位を占めようとすることを制約するものはなく、参入もまた非常に容易である。もちろん、このような市場構造の下では、企業の長期的業績は最悪のものが予想される。それとは逆に、競争に影響を及ぼす力の総和が弱ければ弱いほど、より良好な業績達成の機会が多くなる。
競争に影響を及ぼす力の総和がどうであれ、戦略立案者の目標は、これらの力に対し自社を最もうまく防衛できる、あるいは自社に有利なようにこれらの力に影響を与えることができる陣地を市場の中に見つけ出すことにある。
さまざまな力の総和が生み出す強さというものは、すべての競争相手にとってもなかなか明確には把握できないものであろうが、それらのすべての競争相手に対抗していくためには、戦略立案者はそれぞれの力の本質を見極め、そしてその源泉を分析しなければならない。たとえば、どんな要因が市場への新規参入を容易にするのか、あるいはどんな要因が供給者の交渉力を規定するのか。




