不確実性の高い移行期を
いかにマネジメントするか

 トーマス・エジソンが電球を発明したことにより、ガス灯の時代は終わり、電力時代が幕開けした。しかし、ガス会社はすぐに破壊的イノベーションの犠牲になったわけではない。また、完敗を喫したのではないという言い方もできる。

 従来のガス灯がエジソンの発明によって脅かされると、まず既存のガス会社は、電球のフィラメント技術を拝借して、ガス灯の効率を5倍に高めた。その結果、エジソンが起こした新会社は12年間利益を出すのに苦しみ、倒産寸前まで追い込まれた。

 破壊的イノベーションに詳しい専門家によれば、命運が尽きた技術を補強しようとするこのような動きは、滅びゆく産業の最後のあがきにすぎない。もちろん、彼らは正しい。最終的にエジソンと電気照明が勝ったのだから。しかし、ガス会社はこの破壊が完了するまでに、ガスを用いた照明によって10年以上にわたる時間を稼いだ。その間に、照明分野から抜け出し、隣接分野で利益率が高い暖房事業に進出する準備を整えることができたのである。