さまざまな国際機関とグローバル企業が本拠を置くスイスは、美しく、安全なイメージがある。古くから多くのボーディングスクールも存在しているが、スイス公文学園高等部(KLAS)もその一つだ。同校は独自のバイリンガル教育で、世界中に有為な若者たちを送り出している。卒業生にKLASでの日々を聞いた。

倉井友寛氏
1979年生まれ。KLASを経てカナダ・クイーンズ大学卒業。米国コーネル大学大学院修士課程修了、東京大学大学院博士課程修了。現在、農務スペシャリストとして米国大使館・農務部に勤務。
「今、振り返って、スイスの3年間で培われたのは“日本ではない環境の中でも、自分を確立できる力”だったと思います。グローバルな仕事の現場で自身のパフォーマンスを最大限引き出すためには、“ホーム”ではない環境でも違和感を覚えず、自分であり続けることが必要。当時はあまり意識しなかったのですが、スイスで過ごした高校3年間で多言語、多文化、多人種の環境に“慣れ”、自然体でいる力が培われた。それが一番の宝物だと感じています」
そう語るのは、スイス公文学園高等部(KLAS)を卒業し、現在、米国農務省(USDA)の職員として米国大使館・農務部に勤務する倉井友寛氏だ。主な仕事は、食肉や大豆など米国から日本へ輸出される主要農作物の市場戦略情報(マーケット・インテリジェンス)と、貿易障壁の解決策を探ること。特に市場調査のレポートは世界約190カ国からワシントンに集約され公共の情報として一般に公開される。USDAの目的は、全世界の農家が主体的かつ選択的な農業を行えるようになること、そして自由貿易の推進などである。
全寮制でバイリンガル教育を提供、
進路は世界

スイス公文学園高等部の開校は1990年、以来28年間、スイス・レザンの地で独自の国際教育を行ってきた。全日制・全寮制・男女共学の学園で、在校生は全員日本人、文部科学省によって日本国内の学校に準ずると認められた海外の学校(在外教育施設認定)で、卒業後は海外の大学はもちろん日本国内の大学の受験資格を得られる。
世界へ向けて日本の若者を送り出そうという志によって生まれた学校で、国際教育・バイリンガル教育・人間的成長という教育方針を掲げ、独自のプログラムを実施している。
ネイティブスピーカーによる少人数制の授業で、高度な英語運用能力を育成する一方、国語教育にも力を入れ、英語と国語のバランスの取れたバイリンガル教育を行う。異文化と接触し視野を広げる旅行“スクールトリップ”など、スイスという立地を生かした体験学習や課外活動も多彩で、進路先は文字通りグローバル。海外大学に進学し国際機関や海外企業で働く者から、日本の国公立大医学部に進学して医師として働く卒業生もいる。