IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのテクノロジーを核に、旧来のビジネスモデルからの抜本的な変革を推進する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に向けた取り組みが、企業の存続をも左右しかねない重要なテーマとなっている。そこでは、最新テクノロジーを採用したIT環境の再整備から組織の再構築、人材の育成などを含む広範な領域にわたる施策の実施が求められる。その具体的アプローチについて、ベイカレント・コンサルティングの小塚裕史氏に聞いた。
DXを実現するには
4つの領域の変革が必要

小塚裕史氏
京都大学から野村総研、マッキンゼーなどを経て現職。全社/事業戦略の立案、業務改革、IT戦略立案・マネジメントなど、幅広い業界の顧客の経営課題に対応。主な著書に「デジタル化を勝ち抜く 新たなIT組織のつくり方」(共著/日経BP社)、「デジタルトランスフォーメーション」(共著/日経BP社)などがある。
今まさに「デジタル・トランスフォーメーション」の波がビジネスの世界に押し寄せている。とどまることを知らない技術革新が進むなか、企業は従来のビジネスのやり方を抜本的に見直していくことが求められている。
「具体的には、デジタル技術をベースにした顧客への新たな価値提供と収益構造の転換による『ビジネスモデルの再構築』、AI技術などを活用した人手が全く介在しないプロセスの確立など業務生産性の飛躍的向上を目指した『オペレーションの再構築』、情報システム部門が果たすべき役割の再定義などを含む『ITの再構築』、そして変革を主導する組織の整備や人材育成を核とする『組織・人材の変革』という四つの領域にわたる変革を推進していくことが必要です」と語るのはベイカレント・コンサルティング取締役の小塚裕史氏だ。
デジタル・トランスフォーメーションを実践するには、企業全体としての広範囲にわたる取り組みが不可欠であり、最新テクノロジーの導入による業務効率化などの局所的な話に限定されるべきものではないことは明らかだ。ベイカレント・コンサルティングでは、企業のデジタル・トランスフォーメーションに向けた取り組みをトータルに支援している。
同社は、日本発のコンサルティングファームとして知られ、国内企業の組織風土、ビジネス慣習に精通し、国内企業ならではの課題を踏まえたコンサルティングサービスの提供を大きな特徴としている。「お客さまの思いと当社コンサルタントの知見による共同検討に基づく中長期支援型のサービスにより、お客さまの現場が“腹に落ちる”戦略を提案。実行性に重きを置いた支援を旨としています」と小塚氏は「ベイカレント・スタイル」を紹介する。
昨年来、同社では、デジタル・トランスフォーメーションを実践する顧客企業への支援に注力。デジタルに関する研究・調査を行う「デジタル・イノベーション・ラボ」を起点に、お客さまのデジタル・トランスフォーメーションの支援に力を入れている。
「日本企業では多くの場合、一足飛びにビジネスモデルの変革を目指すのではなく、業務効率化の推進や、顧客の利用するデジタル環境下でのサービス提供を目指した『デジタル化』からスタートします。次に、顧客の行動や業務を丸ごとサポートするために、複数サービスを統合化して提供する『デジタル・インテグレーション』の段階を経て、デジタル・トランスフォーメーションへと着実に進んでいくというアプローチが、ステークホルダーの巻き込みや投資面を含めて現実的な選択になるものと当社では考えています」と小塚氏は語る。