デジタルなチャネルを通じて顧客と接する企業が、その一人ひとりの行動を子細に把握しているとは限らない。ビービットの「ユーザグラム」は、顧客と長期的な関係を築き、長く愛される製品/サービスの提供を支援する行動観察ツールだ。

不安なき時代、市場縮小の時代
顧客との長期的な関係構築に注力を

ビービット
遠藤直紀 代表取締役

 消費者の行動観察を基に、顧客体験(UX/CX)の向上や顧客との関係強化を支援するコンサルティング・サービスを提供しているビービット。同社の遠藤直紀代表取締役は、今日の社会経済について2つのポイントを指摘する。

 「1つは『不安のない時代』だということ。現代社会はモノがあふれており、その中で人々はある程度満たされた生活を送っています。特定のモノが爆発的に売れる時代ではなく、自分が本当に良いと思ったものにしか投資しません。もう1つは『市場の縮小』です。人口減少、消費者嗜好の多様化などに伴い、個々の市場が縮小しています」(遠藤社長)

 企業がこうした時代を勝ち残っていくためには、「自社の顧客が何を求めているのか、どうすれば製品やサービスをもっと好きになってもらえるか」という点へのフォーカスを強めていくことが肝要だと遠藤社長は話す。顧客と長期的な関係を築き、それを維持/深化していくことに力点を置くのだ。

 「今後、皆が同じモノを買っていた時代の“売り切り型モデル”では持続的な成長は望めません。お客様との長期的な関係性に根ざした“サブスクリプション型モデル”として自社のビジネスをとらえ直す時なのです」(遠藤社長)

顧客一人ひとりの行動を観察する
実現の鍵は「デジタル」

 それでは、顧客と長期的な関係を築き、それを継続的に改善していくにはどうしたらよいのか? 鍵となるのは「デジタル」だと遠藤社長は断言する。

 「今日の消費者は、情報収集や購買のチャネルとしてインターネットやスマートフォンなどのモバイル・デバイスを活発に利用します。これらデジタル化されたチャネルでは、一人ひとりのお客様を特定し、それぞれがどのように行動し、何を好み、何を好まないのかを子細に観察することができます。この情報を基に継続的な改善を続けることで、より長く愛される製品/サービスを作れるのです」(遠藤社長)

 例えば、企業の時価総額で世界上位を占めるアップルやグーグル、アマゾンなどはいずれも“デジタル企業”であり、ユーザーIDを通じて一人ひとりの顧客を認識し、それを軸にビジネスを展開していることは周知のとおりだ。

 また、クレジットカード・ローンを強みとする米国の地銀大手キャピタル・ワンは2014年、企業サイトなどに関するUX/CXコンサルティング会社の名門として知られるアダプティブ・パスを買収している。「金融機関がなぜUX/CXコンサルティング会社を?」と思うかもしれないが、「デジタル時代を通じてお客様との長期的な関係を維持/深化していくには、顧客体験の専門家を社内に抱える必要があると判断したのでしょう」と遠藤社長は推察する。