4000万のauユーザーを抱えるKDDIと、4000万の口座を持つ三菱東京UFJ銀行の共同出資により開業した「じぶん銀行」は、最先端を行くインターネットバンクとして金融業界で世界的にも注目されるまでに成長した。同行にはデジタルトランスフォーメーションの考え方を金融業の中で先取りし、ユーザーの利便性を追求し続けた"こだわり"があったという。じぶん銀行の代表取締役社長を経て、現在はKDDI ライフデザイン事業本部 副事業本部長 金融事業戦略担当を務める鶴我 明憲にその全貌を聞いた。

「じぶん銀行」という
KDDIの果敢なる挑戦
――じぶん銀行は通信業であるKDDIと、金融業である三菱東京UFJ銀行の異色のコラボレーションによって誕生しました。どのような背景・経緯から誕生したのでしょうか。
背景にあるのは1980年代に端を発する「金融自由化」の動きです。特に2000年以降の「金融取引の自由化」と「技術革新」により、銀行の取引チャネルは店頭からウェブ、そしてモバイルへと大きく変わるなど、変化の波が押し寄せました。
そうした中、KDDIは自社の情報通信技術やビッグデータ、マーケティング/顧客基盤を活用することで、金融の世界に新たな価値を提供することができるのではないかと考えました。一方で三菱東京UFJ銀行様も、お客さまの利便性を実現する技術を持つ通信業とのコラボレーションが将来の金融事業を担うのではないかと考えていました。そんな両者の思惑が一致して設立されたのが「じぶん銀行」です。
――じぶん銀行にはどのような特長があるのでしょうか。
既存の銀行との最も大きな違いは、リアルな店舗が存在しないところです。既存の銀行は今、リアルの縮小・整理と並行してデジタル化を急ピッチで進めていますが、リアルの縮小にもデジタル化にも投資が必要です。それに対し、じぶん銀行のようなネットバンクは、最初からデジタルでビジネスを始めているため、スタート地点が一歩先に行っていると考えています。
また、ほかのネットバンクとはオンラインの活用という点では重なる部分もありますが、じぶん銀行は開業当初から基本コンセプトとして「手のひらの上の銀行」を掲げているように、モバイルデバイスでの取引を前提としてスタートしたという点で目指す方向性がまったく違います。ほかのネットバンクはウェブ上に開かれた店舗において、パソコンやモバイルなどのデバイスを使って取引するという考え方ですが、じぶん銀行の場合はスマートフォンが店舗そのものという考え方に立ち、すべてのサービスがスマートフォンだけで完結するようになっています。「スマートフォンも使える」のではなく、スマートフォンファースト。これがじぶん銀行の大きな差別化ポイントであり、モバイル前提の金融ビジネスモデルを構築することは大きな挑戦だったと思います。