デジタル化時代の到来は、事業の不確定要素を増やすと同時に、人財(ヒューマン・キャピタル)に求められるスキル要件をめまぐるしく変化させている。このため、人財マネジメントモデルの変革が大きな経営課題となっている。その変革をどう進めるべきかを、日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業本部の石田秀樹氏に聞いた。
適財・適所・適時・適量を
デジタルで実現できる時代に
デジタル化投資をしても、その効果がなかなか現れないことに悩む企業が多いようです。

パートナー(理事)
グローバル・ビジネス・サービス事業本部
コグニティブ・プロセス変革
タレント&トランスフォーメーション リーダー
石田秀樹 HIDEKI ISHIDA組織変革および人財マネジメント領域のコンサルティングサービス部門の責任者。複数の外資系コンサルティングファームを経て、日本アイ・ビー・エムに入社。その間、一貫して「組織」と「人」の側面から、大規模企業を中心に実践的な変革支援に携わっている。
石田(以下略)デジタル化というと、新しいツールやソリューションのことをイメージする人が多いのですが、肝心なのは経営にどう活かしていくのかということ。いまの仕事に対して、どんな効果を得られるのかを紐解かないと、技術に走りがちになります。
デジタル時代の到来で、ビジネスの担い手である人間が、いままでの仕事のやり方を変えていかなくてはならないことは確かです。では、リアルビジネスの領域で、デジタルの優位性をどう活かすことができるのか。それを、きちんと理解しなければいけません。ITリテラシーという言葉が以前からありますが、いま必要なのはデジタルリテラシーです。
そのリテラシーを涵養(かんよう)したうえで、デジタル化の進展によって今後、ビジネスがどう移り変わっていくかを読み解き、予測していくことが、経営者や事業部門のリーダーにとって重要な任務となります。
デジタル化の時代を迎えた人事部門は、どのように変化していくべきでしょうか。
いままでの人事部門は、どちらかといえば労務管理中心のオペレーションでした。それは組織にとって非常に大切な役割ではありますが、そればかりでは経営者が求める人事部門の役割を果たしているとはいえません。
欧米を代表するグローバル企業のほとんどは、社員の登用や評価、再配置などはラインのマネージャーが行います。では、人事部門は何をやっているかというと、従業員サービスを広く提供する機能と、経営参謀を担う機能との大きく2つに分かれています。
従業員サービスとは、各種の問い合わせ対応、給与支払いに関する業務など、人事全般に関わるサービスです。
経営参謀の機能とは、CxOや事業部門長の右腕として、中長期の視点で人的側面から経営戦略を練ることを意味します。簡単に言えば、事業をどのように変化させていくかという戦略に応じた人財活用計画を策定することです。いつ、どこに、どのような人材が、何人必要なのかということです。
「わが社はこういう戦略を立て、事業をこう変えていく。それを実行するために働き手の皆さんにはこういうスキルを身につけてほしい」。そういう方針を明確に打ち出して、社員の自己革新や新しいスキルの獲得を促すのです。
従来から言われていましたが、日系企業の人事部門においても、待ったなしで経営参謀の機能を強化し、経営の視点から人的課題を読み解かないといけないと思います。デジタル時代の到来によって、事業環境も人財に求められるスキル要件もめまぐるしく変化していますから、経営参謀としての人事機能がますます重要になっていると言えます。