デザイン思考のプロジェクトが危機に瀕した理由
デンマークの国立機関で責任者を務めるアン・リンは危機に直面していた。この危機の火元となったのは、デザイン思考を採用したあるプロジェクトだった。
そもそも、この組織はデンマークの労災保険の請求審査と給付額の決定を担当している機関であり、リンは顧客に当たる労災被災者に提供するサービスの改善に向けたプロジェクトを進めていた。
奇妙なことに、プロジェクトは順調に進んでいたように見えた。プロジェクトチームのメンバーは、顧客体験にどっぷり浸かり、顧客とラポール(信頼関係)を築き、顧客の目を通して物事を見ようと相手の気持ちに寄り添っていたからだ。