戦略からテクノロジー、人事・組織まで、業種を問わず幅広くコンサルティング事業を手掛けるデロイト トーマツ コンサルティング。その人事・組織部門のコンサルタントに、数多くの企業の組織変革に携わる中で得られた組織風土改革の要諦を聞いた。
イノベーションを生む
組織風土改革が求められる理由

執行役員
山本啓二
Keiji Yamamoto
15年にわたり組織・人事関連のコンサルティングに従事。企業の戦略方針転換時やM&A・会社分割に伴う事業構造転換時の新たな風土醸成、業務改革や働き方改革を推進するための従業員の意識・行動変革等、企業のさまざまなステージにおける変革を組織・人・風土の側面から支援している。
「リーマンショック以降、デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ、デジタル化の進展によって、戦略展開のスピードが加速しています。また、企業間の情報格差が小さくなっていることもあり、競争優位の源泉として、スピーディーな戦略実行ができる『組織力』『現場力』が求められている。そのためか、この数年、多くの企業で組織開発、組織風土改革のニーズが高まっています」。デロイト トーマツ コンサルティングで組織風土改革のコンサルティングに携わる執行役員の山本啓二氏はそう語る。
組織風土とは、その組織に所属する多くの人に共通したものの見方や考え方、行動特性を指す。「組織風土と企業の戦略や方向性が揃っていれば、事業は力強く前進できます。一方、それが揃っていなければ、組織風土が足を引っ張ってしまいかねない。今の時代、戦略推進を後押しする組織風土を醸成できなければ競争に勝つことができなくなっているのです」(山本氏)。
また、近年、人材の流動性が高まるとともに、働き方改革や多様性の尊重といった考え方が日本社会に浸透するにつれて、「企業が従業員に直接的に行使できる力は、従来に比べて弱まっており、求められるマネジメントの在り方も変わってきている。そうした中で、組織を動かす手段の一つとして組織風土が注目されている側面もある」。そう語るのは、同社シニアマネジャーの坂本裕樹氏だ。
厳しい競争を勝ち抜くためにはイノベーションを生む組織風土の醸成が不可欠となる。そのためには、自由な発想で新しいことに挑戦することが許される組織風土が大前提となるが、多くの日本企業はそれを実現できていない。
山本氏はその理由を次のように語る。「どの企業も『既存事業が優先されてしまう』『周囲の協力が得られない』など、できない理由はほぼ同じ。イノベーションを否定する経営トップはまずいません。ただ、イノベーションの多くは現場でしか分からない、小さなヒントのようなものを積み上げ、組み合わせて、起きるものです。そうした現場からの自発的な動きが起きない、もしくは小さな動きがあっても、既存事業を優先し、現場のマネジメントがせっかくのタネをつぶしてしまっているのが現状です」。
なぜ現場からの新しい動きが起きないのか。同社マネジャーの伊藤拓哉氏は顧客企業での体験を踏まえこう話す。「メーカーの研究開発部門などで、『何でも好きな研究をやっていい』と上から言われても、現場は『何をすればいいか分からない』というのが実情です。現場にとって動きやすく、自由な発想をするための手助けも併せて必要だと思います」。