現実を直視することが
組織風土改革の第一歩

 とはいえ、組織風土というのはその組織で働く人たちによって長い時間をかけて培われるものだ。本当に変えることができるのだろうか。山本氏は「時間はかかりますが、変われない会社はない」と断言する。「まずは経営トップやキーパーソン自らが変革の一歩を踏み出すこと、これが組織風土改革を行う上での大前提となります」(山本氏)。

 前提を踏まえた上で、組織風土改革を行う要諦として山本氏は次の3つのポイントを挙げる(下図参照)。

(1)ゴールの焦点を定める

 組織風土改革では"チャレンジする風土醸成に向けた組織内の対話の活性化"というような目指すべき姿が曖昧なまま、スローガンや打ち手が先行してしまうケースがよくある。改革を通じて何を実現したいのか、従業員の意識・行動を具体的にどう変えたいのかを明確に定めることがスタートとなる。

(2)変えるべき組織を見極め、「変わった」実感を持たせる 

 組織風土を一気に変えることは難しい。組織の中のどこが変わればインパクトが大きいのか、どの部分なら変わりやすいのかを見極め、ターゲットを絞って着手し、「変わった」という実感を持ってもらうことが変化を生み出し、そして変化を継続するために重要である。

(3)"改革実感"の演出と「持続的な効果創出」 

 小さな変化を見つけたら、それを意味付けし、広く発信していくことが、大きな変化につながる起爆剤となる。「組織は2、3割変わるとドミノ倒しのように一気に変わっていきます。これは経験則のようなものですが、われわれのチームメンバーで意見が一致するところです」(山本氏)。

 ただし、これら3つのポイントを押さえさえすればいいというわけではない。「組織風土改革は難しいからこそ、われわれのような外部専門家に支援が求められます。一方で、われわれが徹底して調査して、風土改革のための施策を立案し、きれいな報告書として取りまとめたとしても、その企業の変革は進まないことが多い。われわれがどこで価値を出すべきなのか、いつも葛藤を繰り返しながら、サービスを提供しています」(山本氏)。 

 組織風土を変えられるのは、その組織にいる人だけなのだ。そのため、いかにして当事者意識を持って改革を進めてもらうかが鍵になる。「他社で行っているやり方をまねしても絶対にうまくいきません。自分たちの組織が望ましくない状態になってしまっている原因やその背景を直視し、変えなければならないと思っていただけるか、これに尽きると思っています。われわれは、内部の人たちが自分たちの意識や行動、考え方を自らの意思と力で変えられるような場づくりをお手伝いするのが仕事だと考えています」(山本氏)。

 一方で、新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動に大きな制約が生まれている今は、ドラスティックな変化を起こしやすい時期でもあると話す。「経済全体に深刻なダメージを与えることは確かですが、仕事のやり方、働き方や組織の在り方について、今までの常識を変えるチャンスでもあると考えます。制約の中でのさまざまな試行錯誤から、これまでにない発想が生まれ、イノベーションにつながることを期待しています」(山本氏)。

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