企業の長期的な成長にはESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮が不可欠だ。ステークホルダーからも、自社の持続的成長と社会の持続性向上の双方を実現する企業が求められている。しかし、ESG経営は短期的にはコスト増になる可能性が高い。どうすれば企業成長と両立できるのか。ESGを経営戦略の“ど真ん中”に置く積水化学工業の上脇太取締役専務執行役員に聞いた。

利益とESGをリンクさせる
サステナビリティ貢献製品

積水化学工業
取締役 専務執行役員
経営戦略部長
上脇 太FUTOSHI KAMIWAKI1983年入社。住宅カンパニーで経営企画管理や商品開発、営業統括部長などを経て現在は取締役専務執行役員として活躍。経営戦略部長としてESG経営推進、デジタル変革推進、新事業開発などを手掛ける。

──積水化学はESG経営を本格化する長期ビジョン「Vision2030」とその第一歩となる中期経営計画「Drive2022」を20年度から始動させました。積水化学の考える「ESG経営」とはどのようなものでしょうか。

 簡潔に言うと、社会の持続性向上とグループの利益ある成長の両立を目的とし、社会課題を戦略的に捉え、イノベーションを起こし続けてその解決に積極的に取り組むという「攻めのESG経営」です。

 製品や技術革新を通じた社会課題の解決は当社のDNAです。1964年の東京オリンピック前に販売を開始したプラスチック製分別回収容器「ポリペール」は当時の日本社会で問題となっていたゴミ処理問題の解決に貢献しました。また、1970年には工場生産率が80%を超えるユニット工法住宅を開発、良質で安価な住宅の供給が急がれていた時代のニーズにいち早く応えました。このように社会課題を解決する製品やサービスの創出によって業容を拡大してきた歴史が今も続いている。それが当社のESG経営のベースにあります。

──最近は多くの企業がESGを重視した経営を標榜していますが、積水化学の強みは何ですか。

 まず、レジデンシャルとアドバンストライフライン、イノベーティブモビリティ、ライフサイエンスの4つの事業領域があり、様々な社会課題にアプローチできる点が挙げられます。

「サステナビリティ貢献製品(旧環境貢献製品)」の認定制度を06年度に設け、社会課題解決への貢献度が高い製品を増やしていることも当社の特徴です。認定基準や登録に関しては社外アドバイザーからもご意見をいただき、透明性と貢献度の高さを担保しています。

ゴミ収集車がポリペールに入れられた各家庭のゴミを回収してまわる方式も積水化学の提案によるもの

 課題解決への貢献を拡大し、当社の成長を牽引するこれからの製品・サービスとしては、“まちづくり事業”があります。「太陽光発電システム搭載住宅」を中心に据え、災害による被害を抑制するインフラ製品を導入するなど、当社製品の総合力でまちづくりを展開していきます。老朽化した下水管の内側に硬質塩ビ製の帯を挿入し、らせん状に製管することで下水を止めずに管路を更生する「SPR工法」、自動車の安全性向上に寄与するだけでなく、エアコンの効率化や走行時のCO2を削減可能な自動車の合わせガラス用「遮音・遮熱中間膜」などにおいても、工法の進化や新機能を付与することでさらなる課題解決に寄与していきます。