「他者を思い通りに動かすこと」は
パワーの定義ではない

 あるソフトウェア会社でCSO(最高戦略責任者)を務めるタラは、経営幹部の中では最も新しいメンバーである。CEOを除く他のメンバーは、買収の過程でこのチームに加わった技術系の人たちだ。チーム唯一のMBA保持者であるタラはビジネス側の人材で、取締役会から推薦されてチームに加わった。

 タラは自分の任務を、とても楽しみにしていた。その任務とは、同社の細分化された部門をまたぐ、全社的な戦略を立案することだった。

 しかし、数カ月経ってもタラはほとんど実績を上げられなかった。あらゆる場面で、他の幹部から反対を受けたのだ。いら立ちを募らせたタラは、彼女を支持してくれている取締役会のメンバーに、CEOと協力して力を貸してくれないかと頼んだ。