イベルドローラを率いた20年
私は、イベルドローラの前会長、イニゴ・デ・オリオール・エ・イバーラから新CEOとして迎え入れたいと言われた日のことをけっして忘れないだろう。イベルドローラは、当時スペイン第2位の公益企業で、国営企業エンデサの後塵を拝していた。
一方、私はスペインの携帯電話会社エアテル・ボビールを率いていた。CEO就任後わずか5年で大手通信業者テレフォニカの主要競合企業に育て上げ、ちょうどボーダフォンに買収されたところで、新たな親会社からは引き続き経営を続けてくれと依頼されていた。イニゴ・デ・オリオールの名声は当然知っていたが、その本人からの電話とはさすがに驚いた。
面談の場所に指定されたのは、マドリードのトップ経営者や銀行家、政治家に頻繁に利用されているホテルのバーだった。午後7時に出向くと、彼は中央のテーブルに座って私を待っていた。そして会うなり用件を切り出した。