パンデミックで在宅勤務が長期化し、人々の仕事観や働き方への意識が変化したことによって、オフィスの在り方が大きく変わりつつある。その実態を世界最大のオフィス家具メーカー、米国スチールケースの「グローバルレポート」を基に明らかにするとともに、オフィス環境や働き方の未来に迫った。そこから見えてきたのは、在宅勤務の経験を教訓とした「より豊かに働く」環境づくりだ。

在宅勤務の長期化が生産性の低下をもたらす
スチールケースの「グローバルレポート」は、働き手の実態・意識を調査するとともに、企業が直面する重要課題を探り、働き方や働く環境を改善するためのデータや知見、方向性を示すものだ。世界10カ国を対象に調査を行った最新レポートでは、どの国でも在宅勤務に戸惑いや不満を感じている従業員が多く、「在宅勤務の経験を教訓として従業員が豊かに働ける環境をいかに創造するか」が今後の企業成長の鍵を握るとしている。
実際、在宅勤務に関して従業員は通勤時間の削減やストレス減少にメリットを感じているものの、コミュニケーション不足による孤立感やエンゲージメント・生産性の低下を重大な課題として挙げている。なかでも、組織の意思決定が遅く、自分の責任範囲が不明瞭で、長時間労働に陥りやすい場合、エンゲージメントと生産性はさらに低下する傾向があるという。
一方、多くの日本企業ではオフィスが価値を生み出す戦略ツールとして位置づけられていない点も課題だ。欧米の先進的な企業は、生産性やアイデア創出、セレンディピティ(偶然の出会いによる予想もしない発見)を重視し、在宅勤務からいち早く従業員をオフィスに戻している。優秀な人材の確保と定着という観点からも、オフィスを戦略ツールとしてとらえるべきだ。