典型的な失敗パターンのもう1つは、AIを従来のITと同じ方法論で扱ってしまうことだ。ITシステムはビジネス要件を決め、それに合わせて業務処理のルールやプロセスを演繹的に設定していく。いわゆるウォーターフォール型の開発により、上流工程でコンサルタントが行った設計に基づいて、下流工程のエンジニアがプログラムを書くという流れがうまく機能した。

 これに対して、「AIの開発はデータセットを学習したAIが、アルゴリズムに則ってプログラムを自動的に導く帰納的な世界。同じ技術でも、学習させるデータによりできるものが変わるため、事前に完全に設計することが困難です。だからこそ、つくっては試し、うまくいかなかったら要件定義を見直すといったアジャイルな開発プロセスが必要となります」。

 とりあえずやってみようと見切り発車してもだめだし、あらかじめすべて決め打ちしてもうまくいかない。AI活用はそのバランスが難しい。

技術とビジネス価値との
接点を見つける視点を持つ

 Laboro.AIでは、AIを用いて企業のコアビジネスを変革するという命題のもとに、AIソリューションの開発・導入を支援してきた。その立場から、AIのビジネス実装のポイントとして、藤原氏は次の2つを挙げる。

 1つめのポイントは、「ビジネスにAIを実装する際、まずすべきことはAI技術の選定ではなく、AIを前提としたビジネスのあり方を創造的に『デザインする』ことです」

 ビジネスで用いる以上は、どのような課題に対して、どのようなアプローチで挑み、何を達成するのか、こうした要件の決定と組織内での共有が先立っていなければいけない。そのうえで、「どこまでをAIが担当するのか、ビジネス成果のためのAIの使い方を議論し、AIと人が共存する業務オペレーションに変えていくことが何より重要です」。

 2つめのポイントは、「個別のAIを目的に沿って組み合わせ、課題解決のための最適なソリューションとして『デザインする』ことです」。

AI技術とビジネス価値の接点を見いだす