変革に必要なものとは何か
危機的状況にある大企業に関して何よりいら立たしいのは、危機を招いたのがほかならぬ、かつて大企業への道を開いた行動だという点である。王道を歩むことにより、困難に陥ってしまったのだ。
起死回生を期待する人々は、この皮肉な状況に対処できると考えるかもしれない。しかし、戦略コンサルティングの仕事に携わって13年になる筆者は最近になってようやく、組織にとって新たな現実に抵抗するのがいかに定番の対応であるか、このメカニズムの根底にある感情がいかに強烈であるかを理解し始めている。おそらく、まずは具体例を紹介するのがよいだろう。
筆者の駆け出し時代のクライアントに加工食品会社のCEOがいた。この人物とは極めて良好な関係の下でともに製品購入者、競合他社、新技術に関するデータ、すなわち専門的なエビデンスを分析したつもりでいた。