新規事業創出やDX(デジタル・トランスフォーメーション)のプロジェクトを成功に導くための重要な役割として、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が注目されている。一方、多くの企業経営者には、まだまだPMOはあまり知られていないのが実情だ。そこで、PMOの存在意義と、理想のPMOのあり方について、みずからもプロジェクトマネジャー(PM)を経験し、現在プロジェクトマネジメントの研究・教育に従事している専修大学大学院商学研究科研究科長の小林守教授に聞いた。
プロジェクトマネジャーを支える
“ヘルプデスク”のような役割
多くの経営者にとって、「PMO」はあまり耳慣れない言葉に違いない。
「プロジェクトマネジメントオフィス」という正式名称の通り、組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門のことだ。

研究科長 教授
小林 守氏 Mamoru Kobayashi
一般社団法人 日本PMO協会によれば、PMOの主な役割は、(1)プロジェクトマネジメント方式の標準化、(2)プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発、(3)プロジェクトマネジメント業務の支援、(4)プロジェクト間のリソースやコストの各種調整、などである(同協会ホームページより)。
「PMが、予定通りにプロジェクトが進捗しない、人材や資金が足りないといった困り事を抱えた時に、対策をアドバイスする“ヘルプデスク”のような役割を果たします」と説明するのは、プロジェクトマネジメントを学術的に研究している専修大学の小林守教授である。
もともとは欧米で生まれた組織概念だが、小林教授によると、日本でも十数年ほど前から社内にPMOを設ける企業が増えている。
その動きは、社会や経済の変化と先行きの不確実性が高まる中で、ますます加速しているようだ。
変化に対応するため、企業は新規事業の創出やDX推進など、さまざまなプロジェクトを立ち上げている。規模の大きな企業ほど、膨大な数に増えたプロジェクトのすべてをPMOによって統合的に管理し、効率よく前に進ませる必要性が高まっているのである。
個々のプロジェクトにおいても、PMOの存在は非常に重要である。
「PMはチームを束ね、それぞれのチームメンバーに最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことに力を注がなければなりません。頻繁に予算消化や作業の進捗状況までチェックしていると、その力が削がれてしまいますが、PMOが肩代わりすれば、PMが“やるべきこと”に専念できるようになるわけです」(小林教授)