水ingエンジニアリング
代表取締役社長 池口 学氏(左)、エンジニアリング本部副本部長 塚本祐司氏(右)

水処理施設の設計・建設を行う水ing(スイング)エンジニアリングは、収益圧迫の要因の一つである業務プロセスのボトルネックを解消するため、「誰が、何を、いつまでにやるのか」というタスク情報を可視化して共有できる仕組みの構築を決定。そのための基盤として表計算ソフト等で課題管理や進捗管理を行うのではなく、ワークマネジメントツールのAsana(アサナ)を導入した。 プロジェクトの見える化をしたことで、リモートワークが常態化しても生産性を上げ、業務の平準化が出来る手応えを感じつつあるのだが、さらにこの可視化されたベストプラクティスの共有は、ベテランから若手への業務ノウハウの継承にも役立つという効果も生まれ始めた。

高品質の業務を予算内でいかに実現するか

 上下水道を中心に産業用水処理、排水処理まで、水にまつわるあらゆるサービスを官民向けに提供する水ing。

 水ingエンジニアリングは、その水ingグループの建設・メンテナンス事業会社として、水処理設備の設計・工事・アフターサービスなどを行っている。これまでに設備を納入した浄水場は約570カ所、下水処理場は約440カ所、産業用水・排水処理場は約3000カ所と、いずれも国内トップクラスの実績を誇る。

 同社の主な顧客である上下水道事業者のニーズは、時代とともに様変わりしている。急速な人口減少で料金収入が減る一方、インフラの老朽化は進んでいる。そのため、設備を新設するよりも、既存設備をいかに適切に更新・維持するかが求められているのだ。

 当然ながら、新設する設備の予算管理も年々厳格化している。水ingエンジニアリングとしては、いかに予算の枠を超えず、高品質の設備を納めたうえで、収益を確保するかということが大きな課題となっていた。

水ingエンジニアリング
エンジニアリング本部副本部長 塚本祐司氏

「収益を圧迫する要因の一つは、計画から設計、製作施工、引き渡しに至るエンジニアリングフロー(業務プロセス)の“流れ”の悪さです。前工程が不明瞭な指示や五月雨(さみだれ)式の指示を行うので、後工程の作業が滞り、手戻りも多くなってしまう。そこで、“流れ”を妨げる原因となっているボトルネックを特定し、改善することにしました」と語るのは、同社エンジニアリング本部副本部長の塚本祐司氏だ。

 同社は、2019年頃からTOC理論に基づいて各業務の状況を洗い出し、最大のボトルネックとなっているのは、設計部門であることを突き止めた。

 そして、設計担当の業務を中心にエンジニアリングフロー全体を改善する「Smart Flowingプロジェクト」を2021年4月に始動させた。

 設計担当がボトルネックとなっていたのは、一人の担当者が数多くのプロジェクトを抱え、仕事をこなすことに精一杯だったからだ。「誰に、何を、いつまでに行う」といった十分な調整を行う余裕がなく、とにかく前に進めようと、目の前の仕事から片付けようとする。その結果、優先順位がわからなくなり、うっかり漏れてしまった仕事の指示を五月雨式に出し、仕事の緊急度が増してしまうという悪循環に陥っていた。

「抱えるプロジェクトの件数が増えるほど混乱は深まり、後工程への影響が大きくなります。しかし、マネジャーは各設計担当者がどれだけ仕事を抱えているのかが見えないので、より多くの仕事を与えてしまう。その結果、設計担当者の業務負荷がますます高まるという問題が明らかになりました」と塚本氏は明かす。