事業環境の激変に対応するため、新規事業創出やDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む動きが広がっている。だが、プロジェクトチームが十分に機能せず、計画が頓挫するケースも少なくない。どうすればプロジェクトを成功に導くチームをつくれるのか。企業のプロジェクトマネジメントを支援するアイシンクの伊藤健太郎代表取締役に聞いた。

アイシンク株式会社
代表取締役
伊藤健太郎氏

組織デザインを描くことがプロジェクトの成功につながる

「そもそも新規事業創出やDXのためのプロジェクトは、市場ニーズの変化や新たなテクノロジーの登場など、不確実性に満ちた状況下で遂行されるものです。不確実性が高まれば失敗確率の向上は当たり前。重要なのは、プロジェクトが始動する前に、成功できる仕組みをつくっておくことです」と語るのは、企業のプロジェクトマネジメントのコンサルティングや人材育成を支援するアイシンク代表取締役の伊藤健太郎氏である。

 事業環境が激変する中、「何かをしなければならない」と多くのプロジェクトをつくらせる経営者は多いが、企業ビジョンとのロジックが曖昧でプロジェクトの優先順位が明確でなく、明確なゴールはあっても、それを達成するために必要な成功の仕組みづくりを“現場任せ”というケースが目立つようだ。

「そのため、プロジェクトチームは成功(ゴール)までの道筋が見えないまま、目の前のことだけに集中し、業務は行うものの成功を意識できず、問題や変更が発生したらそのつど対応することになり、プロジェクトメンバーは疲労し、情熱を感じることもできずモチベーションも低下するという悪循環に陥って失敗してしまうのです」と伊藤氏は説明する。 

 こうした悪循環をなくすには、まず経営者が明確な戦略に基づくプロジェクトを選定するだけでなく、成功できるプロジェクト組織デザイン構築を重視することが重要だ。

 伊藤氏によると、「プロジェクト組織デザイン」は、「ロジック構築」と「組織の創造」の2つで構成される。

「『ロジック構築』とは、プロジェクトの開始から成功までの道のりを論理的に構築する作業です。成功から逆算してそこに至るまでの道筋や外部および内部環境のリスクを明確にし、目標とパフォーマンスを把握するガバナンス機能を整えたマネジメントの総合的な仕組みです」(伊藤氏) 

 一方、「組織の創造」とは、プロジェクトを成功に導くことができる適切なスキルを持った人員を配置し、成功への信念や情熱を共有したプロジェクトチームや文化をつくり上げることだ。