2021年11月30日、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューはウェブセミナー「DXを実現する AI&データ経営の実践」(協賛:アクセンチュア、セールスフォース・ジャパン(Datorama)、インフォマティカ/NTTコミュニケーションズ、ドーモ)を開催した。多くの企業がデータ分析やAI活用に積極的に取り組んでいる一方で、失敗談を聞く機会も増えている。どうすればビジネス成功に貢献できるのか。セミナーではビジネスパーソンに向けた具体的な実践方法に関する講演が提供された。
データ分析の本質は
意思決定プロセスの再設計にあり
基調講演には滋賀大学データサイエンス学部教授の河本薫氏が登壇し、ビジネスパーソンに向けてデータ分析でビジネスをより良いものにする仕事の進め方を紹介した。大学教員に転身する前、河本氏は大阪ガスでデータ分析専門組織を立ち上げ、数々の成果を出した実績を持つ。豊富な経験を踏まえ、「データ分析でビジネスに貢献するシナリオを描くこと」が不可欠と強調した。

データサイエンス学部 教授
河本 薫
ここで重要な点が、データ分析とは課題解決に直接貢献するものではないことである。河本氏は、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士の言葉「組織は意思決定を生産する工場である」を引用し、粗利が低い、顧客満足度が低いなど、企業の経済活動で直面するあらゆる問題は、意思決定プロセスが悪いために起きると指摘する。その意味で、データ分析で課題を解決することは、「勘と経験に基づく意思決定プロセスをデータ分析で合理的なものに改めること」なのだという。
その成功に向けて不可欠な準備が、「課題の発見」「意思決定プロセスの設計」である。最初の課題の発見は、一見すると当然と思うかもしれない。ところが、実際には課題と問題を混同したり、問題を構造的に分解できていなかったりで、つまずいてしまうケースが散見される。さらに次のステップで必要な課題の掘り下げも難しい。よくある失敗が課題を絞り込めないまま、意思決定プロセスの課題を掘り下げようとして、具体性や実効性がないものになってしまうことだ。河本氏は、「データ分析でビジネスに貢献するには以下の4段階のシナリオが書けなければならない」と語った。
・どんな問題を解消するかを明らかにする
・どんな課題を達成するかを明らかにする
・その課題を意思決定プロセスの課題に掘り下げる
・データ分析で何が分かればその課題が解決するかを明らかにする