組織変革で人は動かない

 300億ドル規模の電気エンジニアリング企業アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)は、大胆な戦略行動でメディアを賑わせたが、グローバル規模の奇抜なマトリックス組織もそれに引けを取らないほど注目を浴びてきた。ABBのマトリックス組織は1300の事業会社で構成され、最前線の各組織のマネジャーは地域マネジャーと世界全体の事業責任者、両方への報告義務を負う[注1]

 ところがこの組織形態は、ディジタル・イクイップメント、シティバンク、ウエスチングハウスがこぞって試し、いら立たしい試行錯誤を経てわずか数年後に投げ出した形態と、まったく同じなのである。

 ほかならぬパーシー・バーネビック(ABBのCEO兼社長)自身が、複雑で形式張った事業組織には否定的な見方をしている。鈍重で融通が利かず、官僚的になりがちだというのだ。「さらに困ったことに、社内の組織間、あるいは顧客との間に壁をつくり、自発性や主導権を発揮すべき人々からそれらを奪い、この種の環境でうまく立ち回る人材を引き寄せてしまうのです。我々はこれとは正反対の性格を持つ組織をつくりたいと思っています」とも述べている。