「SaaSなどを導入しても、業務の効率化や売上げアップなどの成果につながらない」と悩む企業は多い。最大の理由は、せっかく導入したツールを全ユーザーが同じように使いこなせていないことだ。そこで、ユーザー全員が同じように使いこなすだけでなく、ソフトウェア導入の本来の目的の達成や効果の創出までを含めたユーザー体験を高める「デジタルアダプション」(定着化)という考え方がカスタマーサクセスのカギを握る技術として注目されている。
DXの期待と現実のギャップを埋める
デジタルツールを導入する際、効果はすぐに創出されると期待される一方、現実はそうならない。これまではユーザーがテクノロジーに合わせることを強いる性格のものであったが、その逆を行くのがデジタルアダプションだ。ユーザーに一方的に負担を強いるのではなく、ユーザーに寄り添うテクノロジーが間に入ることで、企業がSaaS導入の価値をもっと高めることができる技術だ。デジタルアダプションを活用している企業では、日常業務の負荷軽減による生産性向上や低頻度ながら対象ユーザーが多い業務のサポート負荷の軽減といった効果を得ているという。
そこで優先すべきは、ユーザー体験の改善であり、カスタマーサクセスである。
「SaaSの利用促進と定着を図るために、社内マニュアル・FAQの作成や社内講習会を実施しているものの、実施負荷は大きいとお聞きしています。また、企業が導入するSaaSの数は増えており、新たなツールを導入するたびに教育のための時間とコストを費やさなければならないことが負担となっています」

第一営業本部 本部長
中川 哲氏
そう語るのは、デジタルアダプションのパイオニア企業として知られるWalkMe(ウォークミー)第一営業本部長の中川哲氏である。
デジタルアダプションとは、直訳すれば「デジタルの定着化」だ。
いくら革新的なデジタルツールを導入したとしても、それが社内に定着し、社員に活用されなければ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の効果は生まれない。実際、経営者がデジタルツールの導入によって「期待する効果」と、社員が新たなツールの導入に混乱・反発し、時間をかけて使いこなせるようになるまでの「現実の効果」には、大きなギャップがあることが明らかになっている(図表)。