デジタル技術で企業の課題解決や事業の発展を支援するユニリタは、自社の成功体験をもとに、顧客情報の一元管理から、データの可視化・分析、メンバーの活動管理など、カスタマーサクセスに必要な機能を取り揃えたカスタマーサクセス管理・支援ツール「Growwwing」(グローウィング)を開発した。同社において、自社が提供するSaaSの解約率を3分の1以下に減らしたことで、高い効果が証明されたツールだ。

ばらばらだった顧客情報を一元化

 SaaSやサブスクリプションモデルなど、「使い続けてもらう」ことで継続的に売上げを得る製品・サービスは、いかに顧客の“成功体験”を高め、解約されないようにするかが重要だ。

 近年、カスタマーサクセスが注目されているのはそのためである。

 企業向けにITサービスマネジメントなどのSaaSを提供するユニリタも、2017年からカスタマーサクセスに力を入れてきた。

「10年ほど前にリリースしたSaaSの解約率が目に見えて高まってきたので、『何とかしなければならない』という危機感を持ち、カスタマーサクセスの専門チームを立ち上げました」

ユニリタ  クラウドサービス事業本部
ビジネスイノベーション部 部長代理 兼 Growwwing グループ グループリーダ
尾上雄馬氏

 そう語るのは、同社のクラウドサービス事業本部ビジネスイノベーション部 部長代理兼Growwwingグループリーダを務める尾上雄馬氏である。

 解約率を下げるには、まず「ARR(年間経常収益)やLTV、解約率」といった主要なKPIの現状を可視化し、目標値を設定する必要がある。目標値と現状がはっきりしない限りカスタマーサクセス活動の進捗を測ることができずPDCAを回すことができないからだ。その次に実施することとしてはいままでの解約情報を分析し、解約に至るまでの期間や解約理由に特定の傾向がないかを分析する。しかし、「カスタマーサクセスチームを立ち上げた時点では、そうしたKPIや解約分析が、まったくできていませんでした」と尾上氏は当時を振り返る。

 それは、各ユーザーの契約や利用状況、サービス対応履歴などのデータが部門や担当者ごとにばらばらに管理され、一元化されていなかったからだ。

 そこで同社は、これらのデータをすべて統合し、ダッシュボード上で全体的な傾向やユーザーごとの変化を可視化できる仕組みを構築。その結果、「解約した企業のうち、約7割の企業が導入から2年以内に解約している」という状況が明らかになった。「つまり、導入してから使いこなせるようになるまでの支援が不十分だったことが判明しました。このフェーズにおける支援に注力したことによって、18年時点で約10%だった解約率は、19年に5%、20年には3%と急激に下がりました」と尾上氏は明かす。さらに、可視化されたユーザーごとの利用状況に基づいて、さらなる活用の提案を行った結果、既存ユーザーによる追加アカウントやオプションの契約も倍増した。