カスタマーサクセスの成果を最大化するには、直接の担い手であるカスタマーサクセス部門だけでなく、人事などのバックオフィスを含むすべての部門が、その意義を共有することが重要だ。カスタマーサクセス支援のためのコンサルティングなどを提供するバーチャレクス・コンサルティングは、カスタマーサクセスの成果を最大限に上げる“仕組み”だけでなく、それを回す“哲学”も含めた体制づくりを支援している。

大企業が抱えるカスタマーサクセスの課題とは?

「自社の成長のためにカスタマーサクセスは必要だ」と考える企業は、ここ数年、確実に増えている。

 コンサルティングを手掛けるバーチャレクス・コンサルティングは、2019年から、「カスタマーサクセスに関する実態調査」を毎年実施している。

 その21年調査によると、「直近1年間で、カスタマーサクセスの必要性を感じるようになった」との回答は、カスタマーサクセスという言葉を知っている人のうち、サブスクリプションモデルで製品・サービスを提供している企業で89.6%、それ以外の企業でも79.4%に上った。

バーチャレクス・コンサルティング
取締役 常務執行役員
奥村祥太郎氏

「いわゆる“非サブスク企業”でも8割近くが、既存の顧客と継続的につながり、“成功体験”を提供し続けなければ、生き残れないと考えていることがわかります」と語るのは、同社取締役常務執行役員の奥村祥太郎氏である。

 その背景について、同社常務執行役員ビジネスインキュベーション&コンサルティング部長の森田智史氏は、「人口減少による市場縮小が進む中、新規顧客の獲得が年々難しくなっていることから、既存顧客と良好な関係性を保ち続けることの重要性が増しています。顧客の意識や行動を可視化するツールなど、カスタマーサクセスを実践するためのデジタルソリューションが急速に普及し、それを活用して成果を上げる企業が増えていることも、変化の大きな理由でしょう」と語る。

 実際、バーチャレクス・コンサルティングが支援する企業にも、小規模なスタートアップだけでなく、大手の“非サブスク企業”が増えているという。そうした大手企業のコンサルティングを通じて、同社が課題と感じているのは、カスタマーサクセスに対し、全社が“一枚岩”になり切れないことだ。

「小規模な会社であれば、全社員の認識を統一しやすいものですが、大規模の会社では、経営層と直接の担い手であるカスタマーサクセス部門以外には、『なぜ重要なのか?』ということが理解されにくい。実は、こうした共通認識の不在が、カスタマーサクセス推進を妨げる大きな要因の一つになっているのです」と奥村氏は見る。

バーチャレクス・コンサルティング
常務執行役員
ビジネスインキュベーション
&コンサルティング部長
森田智史氏

 たとえば、カスタマーサクセス部門が顧客支援を通じて得た「新たなニーズ」の情報は、よりよいプロダクト開発に役立つはずだが、開発部門がその意義を理解し、受け取る仕組みがないと、せっかくの情報が無駄になるおそれがある。

 また、「カスタマーサクセスが会社の成長のために重要だと理解すれば、人事部門も優秀な人材を送り込んだり育成に投資したりするはずですが、その理解が足りていないと人材の選抜や割り当てる人数が不十分になってしまいます。つまり、事業部門だけでなく、バックオフィスも含めたすべての部門にカスタマーサクセスの重要性を認識してもらうことが必要なのです」と森田氏は語る。