あるべき姿に向け、みずから変化を起こす
「攻め」のガバナンスも重要だ

 米国のPwCでM&A(合併・買収)支援チームに所属するなど、日本、米国、アジア地域におけるクロスボーダー統合案件を中心に豊富な経験と実績を持ち、国内外のコーポレートガバナンスにも詳しいPwCコンサルティングの愛場悠介パートナーに、コーポレートガバナンスの戦略的意義と日本企業の課題について聞いた。

――タケダのガバナンスモデルをどのように評価するか。

愛場 全体観として、まさにグローバル企業のガバナンスモデルという印象だ。2019年にShire社を買収したことも影響していると思うが、ガバナンスの点でもグローバルなメガファーマ(巨大製薬企業)に伍していこうという意欲が見て取れる。

 16人の取締役のうち12人は独立社外取締役が占めており、独立性や意思決定の客観性・透明性が担保されているだけでなく、坂根正弘氏、志賀俊之氏(元日産自動車最高執行責任者)、藤森義明氏(元日本GE CEO)など、さまざま業界でグローバル企業をマネジメントしてきた多様な経験と知識を持つ独立社外取締役を選任している。また、デジタルとデータのスキルを有するメンバーも取締役会に入っており、将来のビジネスモデル改革も視野に入れていることがうかがえる。

 ガバナンスの実効性を高めるために指名委員会、報酬委員会を積極的に活用しており、両委員会と監査等委員会の構成員をすべて独立社外取締役としていることは、形式的な機関設計ではなく、実質を重んじていることの表れではないか。

 経営執行メンバーであるTETも18人中13人が海外人材、6人が女性であり、グローバル企業にふさわしい多様性に富んでいる(前ページ図表参照)。

 こうした先進的なガバナンスモデルと表裏一体を成しているのが、タケダのパーパスや価値観であり、パーパスを単なるお題目にしないために試行錯誤しながらガバナンスを進化させてきたのだと思う。

――ガバナンスの戦略的意義と日本企業の課題について伺いたい。

愛場 ガバナンスといえば、不正防止や法令遵守など一般的に「守り」のイメージが強い。企業価値を毀損しないための「守り」に加えて、企業価値を高めるための「攻め」のガバナンス、つまり適切にリスクを取る動機付けも同様に重要だ。

 コロナ禍で経営環境が大きく変化する中、既存の事業やビジネスモデルを踏襲するだけでなく、みずから変化を起こすアニマルスピリットを日本企業は取り戻す必要がある。感染症の大流行に限らず、ITバブル崩壊やリーマンショックなど、大きな変化は10年単位で起きている。経営者は、10年先に自社はどうありたいかという長期ビジョンを描き、あるべき姿を自分たちの手でつくり出していくことが求められる。

 そうした攻めのガバナンスを確立するためにも、経営の監督・執行それぞれでメンバーの多様性を確保しなければならない。単一の事業経験しかない、あるいは同質的なバックグラウンドを持つメンバーばかりでは、多様でイノベーティブなアイデアや意見は出てこない。

 改訂CGコードにしても、あるいはESGやサステナビリティ課題への対応にしても、ルールができたから守るという姿勢ではなく、自社が描いたあるべき姿に照らして自分事として、本質に踏み込んだガバナンス改革や企業変革を行うこと。トップマネジメントはそこにコミットすべきだと思う。

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