「リスクマネジメントは、経営の意思を貫き通すために欠かせないツールです」と語るのは、企業のリスクマネジメントを支援するニュートン・コンサルティング取締役副社長の勝俣良介氏だ。「リーダーが思い描く事業の発展や成長を実現するには、それを妨げる主要なリスクを特定し、リーダーみずからが潰さなければならない」と提言する。

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント
勝俣良介氏

リスクマネジメントはリーダーこそが率先すべき

 コロナ禍や、それを遠因とする半導体不足。地政学リスクや気候変動問題を引き金とするエネルギー価格の高騰など、企業を取り巻くビジネス環境は、複雑な社会課題がまた新たな課題を生み出すという“負の連鎖”よって、不透明さを増している。

 その一方で、会計不正や品質不正、内部の人間による情報漏えいなど、ガバナンスの不徹底によって経営が内部から崩壊する事例も目に余るようになってきた。

 このように、企業が想定すべきリスクの種類と数は年を追うごとに増加しているが、そのすべてに備えるにはリソースが不十分であることから、どれも中途半端な準備に留まっている企業が多いようだ。

 その結果、いざ有事となった時に対応が遅れ、ミスが頻発することで被害を大きくしてしまう。

「真のリスクマネジメントとは、想定しうるリスクを洗い出すだけでなく、その中から、特に経営に大きなインパクトをもたらしかねないリスクを絞り込んで、集中的に対策を講じることです。それができるのはリーダー以外にいませんし、リーダーこそが率先して、リスクマネジメントに取り組むべきだといえます」と、ニュートン・コンサルティングの勝俣良介氏は提言する。

 多くの企業では、リスクマネジメント部門などを設けて対策を現場に丸投げしているが、「企業の発展や成長に責任を負うリーダーが推進役となって、全社の危機管理をリードするのが、本来あるべき姿だといえます。リスクマネジメントとは、経営の『目標達成ツール』であり、『意思決定ツール』なのです。リーダーは、みずからが定めた経営目標を達成させるために戦略を策定し、遂行させるわけですが、それを計画通りに進めるには、想定しうる障害をあらかじめ潰しておかなければなりません。戦略遂行とリスクマネジメントは、表裏一体の関係なのです」と、勝俣氏は語る。

不測の事態にも臨機応変に対応できる訓練を

 では、リーダーは、いかにリスクマネジメントに取り組むべきなのか。