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急成長企業の経営の舵を取る
ケビン・シェアラーには、成長について語る資格がある。
もともとはアメリカ海兵隊の将校として原子力潜水艦のプログラムに携わっていたが、マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントに転身し、1984年にゼネラル・エレクトリック(GE)に入社した。
アナポリス海軍兵学校卒の彼がジャック・ウェルチの下で、スタッフ・アシスタントとして働き始めたわけである。そしてその後2つの部門、まずソフトウエア、次に人工衛星のゼネラル・マネジャーを務めた。どちらの業界も当時、急速な成長と変化を遂げようとしていた。
その後彼は、89年にMCIに移り、営業とマーケティング部門を指揮した後、法人市場部門の長に就任した。長距離電話業界もまた、当時日の出の勢いで、急激な成長を遂げていた。
そして92年、彼はアムジェンのCEO、ゴードン・バインダーの有力な後継者として、同社の社長兼COOに就任したのである。そして2000年5月、バインダーの後任としてCEOとなり、2001年1月には会長に就任した。
アムジェンはたった2つの製品の成功で、バイオテクノロジー業界のトップに躍り出た企業である。2つの製品とは、腎臓透析患者向けの貧血治療薬〈エポジェン〉、そして化学療法中のガン患者向け抗感染症薬〈ニューポジェン〉である。どちらの製品も80年代後半に開発され、ほとんど競合品がなかった。
CEOに就任したシェアラーは事業規模を拡大させることを目標にした。バイオテクノロジーは、もっぱら注射で用いられる「高分子」のタンパク製剤を生み出す技術であるが、シェアラーは伝統的な医薬品であり、「錠剤」でも用いられる「低分子」製剤にも手を広げることにした。
また開発品パイプラインの拡充にも努めた。実のところ、彼がCEOに就任してから発売された新製品は、〈アラネスプ〉(〈エポジェン〉の第2世代の貧血治療薬で、効果の持続時間が長い)と、〈ニューラスタ〉(〈ニューポジェン〉の第2世代の抗感染症薬で、より優れた効果を発揮する)の2つだけだが、どちらも大きな成功を収めている。
シェアラーはさらに、他のバイオテクノロジー企業との提携を推し進め、買収にも乗り出した。アムジェンにとって最も重要なM&Aは、2002年に110億ドルで買ったイミュネックスである。当時バイオテクノロジー業界第3位のこの会社は、関節炎患者の抗炎症薬である〈エンブレル〉を製造販売していた。