IT人材不足が深刻化する中、ITエンジニアの採用にこだわっていては肝心のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に遅れが生じかねない。そうした企業のニーズに応えているのが、ITエンジニアに特化した人材派遣サービスを提供するラクスパートナーズだ。未経験者を採用してITエンジニアに育成したうえで派遣し、クライアント企業のIT課題の解決を支援している。「正社員と派遣社員のハイブリッド」によるIT業務の社内分業が、DX推進には欠かせない。

ラクスパートナーズ 代表取締役社長
吉田雅行
MASAYUKI YOSHIDA
証券会社を経て、2008年にラクス入社。IT人材事業の執行役員事業責任者として、ITエンジニア派遣ビジネスを牽引(当時のエンジニア数は76人)。その後、エンジニア数が235人に到達した2018年3月、IT人材事業を分割吸収しラクスパートナーズを設立、同社の代表取締役に就任。

企業のニーズにマッチした
ITエンジニアを育成

 IT人材不足がますます深刻化する中、多くの企業がITエンジニアの採用に苦労している。IT技術の進歩があまりに速いため、企業が求めるスキルと既存のITエンジニアのスキルにギャップが生じていることも要因の一つだ。システム開発を外部に委託する方法もあるが、市場の変化に対して早急かつ臨機応変な対応が難しく、ビジネスチャンスを逃しかねない。

 そこでいま、「正社員と派遣社員のハイブリッド」でIT業務の社内分業を進める企業が増えている。たとえば、競争力の源泉となるコア業務は正社員が担当、それ以外の業務は派遣社員に任せるといったようにIT業務を分ける。こうすれば人材不足を補えるうえ、人材を効率的に活用できるわけだ。

 そうした企業のニーズに応えて急成長を遂げているのが、クライアント企業に常駐するITエンジニアの派遣に特化した常用型派遣(派遣元事業主が派遣労働者を常時雇用)サービスを提供するラクスパートナーズだ。最大の特徴は、あえて未経験者を社員として採用し、企業のニーズにマッチした特定領域に絞って深く教育することで、即戦力のITエンジニアを創出していること。同社代表取締役社長の吉田雅行氏はその狙いを次のように話す。

「専門分野に限定すれば、ITエンジニアを早く育成できます。具体的には約3カ月の研修でウェブ開発やインフラ、機械学習、QA(品質管理)などに特化した教育を実施します。さらに、ビッグデータやDXが注目され始めた時には、機械学習エンジニアの育成をいち早く始めたように、企業のニーズを先取りしたITエンジニアの創出に努めています」

 同社は経費精算システム『楽楽精算』などのクラウドサービスを手掛けるラクスの人材サービス部門が2018年3月に吸収分割して誕生した。同社が運営していたITエンジニアスクールで培った質の高い教育プログラムや育成ノウハウを引き継いでいるのが強み。クライアント企業への入念なヒアリングに基づき、現場のニーズに合った研修カリキュラムやテキストを自社で作成できるのも、このバックボーンがあるからだ。

 実際、超実践的な研修で実力を養っているため、同社から派遣されるITエンジニアは、研修後すぐの参画であっても「通常の2~3年の経験者と遜色ないレベル」とクライアントからの評価は高い。「派遣先の“一員”となり、社員と課題や目標を共有したうえで、その解決や達成に貢献できる力も備えています」(吉田氏)という点も好評のようだ。

 もっとも、このような常用型派遣事業は派遣先を獲得できなければ社員の人件費が大きな負担となり、すぐに赤字になってしまう。つまり、このビジネスモデルを支えているのは、派遣先の企業が求める質の高い人材を生み出す「教育」なのである。

 同社の社員採用率は3~4%程度という“狭き門”。プロモーションをしっかり行って意欲のある未経験者の応募者を多く集め、その中から適性人材を選りすぐっていることが質の高いITエンジニアの創出につながっている。

「未経験者を対象にしているのは、もともと数が少ない経験者を奪い合うのは効率が悪いし、定着率も低いからです。逆に未経験者は定着率が高いという利点があります。また、経験者と未経験者の採用ではプロモーションがまったく異なるため、当社の少ないリソースで両方に対応するのは無理がある。一つのことに集中し、そのパフォーマンスを最大化することを意識しました」(吉田氏)