若手ハイエンド層のキャリアアップ支援に特化したアサインは、コンサルティング領域、IT領域の転職に高い実績を残している。求職者の「価値観」を重視した転職支援とは、どういうことなのか。転職市場のいまを俯瞰しながら、成功する転職を考える。

(左から)ASSIGN シニアエージェント 枝野 陽氏、同シニアエージェント 龍崎優磨氏

転職活動の基本は
自分の価値観を知ること

 20代、30代ハイエンド層の転職市場が活発化している。背景にはコロナ禍による新たな働き方を契機としたキャリア形成を取り巻く環境の変化がある。

「コロナ禍によりコンサル・IT業界の転職市場は想定外の変化を見せながら、むしろコロナ前よりも活性化されています」と、アサインでシニアエージェントを務める龍崎優磨氏は指摘する。

「DX(デジタル・トランスフォーメーション)への関心がますます高まる中で、各ファームが組織再編を伴い、クライアント企業のDX支援への取り組みを加速させています。一言にDXと言ってもテーマは幅広く、コロナ禍でのリモートワークに合わせた労働環境の整備や、新たな生活様式に適応するための事業再編、AI(人工知能)によるビッグデータ活用など多種多様です。幅広いテーマに対応するため、コンサルティングファームでは人員の確保が急務となっており、特にテクノロジーへの知見があるSIer出身者の採用が活性化しています。このようなトレンドが成立するのは、ファーム側の採用ニーズの高まりだけではなく、求職者側のキャリアにとっても魅力的なことが起因しています。DX案件のテーマは多種多様であるからこそ、SIerでの経験を活かせる案件で活躍することも、AIやIoTなどの最先端技術に挑戦することもできる自由度があります。キャリアの方針に合わせ、今後の可能性を広げられます」(龍崎氏)

 また同じくシニアエージェントの枝野陽氏は、「業界をまたぐクロスインダストリーの取り組みが増えています」と言う。

「自動車業界を例に挙げると、完成品メーカーを頂点とする新車販売という既存のビジネスの枠組みを超え、MaaS(Mobility as a Service)やADAS(先進運転支援システム)への関心が高まる中で、いままでにないアプローチを模索する企業がコンサルティングファームに依頼をするという動きが加速しています。

 たとえば、MaaS案件においては、自動車業界への理解だけではなく、サービス化していくために交通・物流・旅行・通信といった業界との連携が求められることもあり、自動車業界のみに精通しているだけではなく、他業界への理解や応用力が高いコンサルタントの価値が高まっており、業界の垣根がなくなってきています」

 そういった市場観と併せて、求職者の不安心理を次のように分析する。「終身雇用が崩壊したといわれる昨今、みずからキャリア形成を行う必要が高まり、企業に所属していたら安泰という時代は終わりを迎えています。キャリアの先行きが見通せない現在、みずからの可能性を模索する方が転職市場には多くいらっしゃいます」(枝野氏)。

 では、ビジネスパーソンが具体的に転職を検討する時、何を基準にすればいいのだろう。自分の希望に合った年収や地位、または企業ブランドか。龍崎、枝野両氏は「価値観」だと口を揃える。では、なぜアサインは価値観を軸に転職支援を行うのか。

「価値観を活かすことで、よりよいキャリアにつながると信じています。出身企業や大学は今後のキャリアを選択する際の一つの要素になりますが、価値観を軸にキャリアを描くことが、その人の可能性を最大限発揮することにつながります。なぜなら価値観には、『好き』でかつ『得意』なことが詰まっているからです」(龍崎氏)

 ところが求職者は、自身の価値観を認識していないことが多いという。「面談を重ねる中で、価値観をひも解いていき、本人にも自覚してもらっています。実は転職支援の中では、価値観を引き出すことが難しい部分であり、求職者の過去の経験からお話を伺う中で見つけていきます」(龍崎氏)。そして「求職者のことをその方以上に知ることが必要となります」(枝野氏)。

 支援期間は1カ月半から2カ月半と短期集中だ。5〜10回もの面談を重ねる中で、求職者が自身の理解を深めるサポートを行う。「支援期間は短くて濃い時間にすることが重要です。現職の活動をしながらの転職活動は負荷が大きいので、長期にわたると疲弊して諦めたくなることもあります」(龍崎氏)。

 また、企業側から見ると求職者のキャリアには“旬”があり、いたずらに年月が経ってしまうと価値が下がってしまう側面もある。