FFG傘下の福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行では、ITコーディネータの資格を持つ行員が、中小の取引先向けに「デジタル化支援コンサルティング」を行っています。その一環として、補助金を含めた各種支援策を有効活用してもらい、その効果を検証するのが社会実験の狙いです。

 地域金融機関にとって、取引先の業績向上、地域経済の活性化は自社の存続に直結する課題です。今後は同様の取り組みを全国に広げることで、中小企業のDXをサポートしていきたいと考えています。

デジタル推進人材を
年間45万人育成する

──デジタル人材の育成について、政府としてどう取り組みますか。

「デジタル田園都市国家構想」において、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティスト、エンジニア・オペレータ、サイバーセキュリティスペシャリスト、UI/UXデザイナーといったデジタル推進人材を政府全体で年間45万人育成する体制を2024年度末までに構築する目標を掲げました10

*ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス
 

 そのために、大学や高等専門学校などで学生を育成していくと同時に、社会人のリカレント(学び直し)教育に力を入れます。その仕組みとして経済産業省は、3層構造の「デジタル人材育成プラットフォーム」を提供しています。

 第1層が、オンライン教育コンテンツを紹介するポータルサイト「マナビDX(デラックス)」11です。このサイトでは、デジタルリテラシーからAI(人工知能)などの専門スキルまで、自主的に幅広く学べるコンテンツを掲載しており、コンテンツによっては提供事業者から修了証が発行されます。

 第2層は、「実践的な疑似経験学習」です。マーケティングにおける顧客マネジメントの高度化、生産プロセスの最適化といった実際のDXの場面を想定し、課題解決に向けて受講生同士がアイデアを出しながら、互いに教え合うプロセスを通じて、要求・要件定義、業務適合性の検証、トライアル、実装・運用設計までを行い、意思決定者にプレゼンする実践的なプログラムです。

 そして第3層が「課題解決型現場研修プログラム」です。これは、DXに取り組もうとしている中小企業から解決したい課題を募り、受講者5人程度でチームを組んで、実際の企業の現場に入って課題解決プロジェクトを遂行するものです。第2層で疑似経験学習を修了した人が受講対象で、課題の性質や人材の適性を踏まえて、企業と人材をマッチングします。

 第1層の「マナビDX」は2022年3月にサイトを開設、第2層と3層は「マナビDX Quest(デラックス クエスト)」12として9月からプログラムを開始しました。

 企業や組織の規模を問わずできるだけ多くの方々に、このデジタル人材育成プラットフォームを有効活用して、DX推進の組織能力を高めていただきたいと思います。

※5 DX認定
※6 DX銘柄