予測型経営は、マネジメント変革そのもの
一つは、大手電機メーカーの経理部門における売上げ着地予想にAIを適用した事例だ。AIで予測した結果は、人手による予測と比較して高い精度となった。なぜ、AIによる予測精度のほうが高いのか。「見込みを出せ」と言われて作成した数字には人の意思や組織の都合といったバイアスがかかる。対して、AIはそうした恣意性を排した見込みを人手を介さずに算出する。
結果、従来は見込み数値の精度向上のためにかけていた労力を、具体的な施策の議論に振り向けられるようになる。この企業では、打ち手を検討する時間を増やす業務変革に取り組んでいる最中だ。
もう一つは、アパレルメーカーの店舗別の商品在庫最適化と販売機会最大化の事例だ。
このアパレルメーカーは、店舗別の商品配分に当たって、店長の発注に基づいて数量を決めていた。店長の発注には、どうしても経験や勘、思い込みといったバイアスがかかってしまう。そこで、店長からの発注ではなく、AIによる店舗別・商品別の売上げ予測に基づいて数量を決定したところ、売上げ数量は前期比で2桁増となり、在庫回転率も向上した。
AIによる予測精度が高かった要因は、「類似する属性を持つ商品」の過去の実績から売上げを予測したことだという。アパレル商品はファッション性が高く、ライフサイクルも短いため、後継品ではなく、類似属性を持つ商品を分析することがポイントになる。「品番のカラーコードが違っていても、デザインが似ていれば、AIで同じ商品と見なすことにしました。商品の類似性から売れ行きを予測した結果、在庫の最適化、販売機会の最大化につながりました」と野村氏は説明する。
データドリブンマネジメントの重要性が叫ばれて久しいが、真の意味でこれを実践できている企業は、わずかだ。その理由はデータ活用を中心に企業活動(業務)が設計されていないことだ。業務の実行結果として生み出された“データ”ではなく、意思決定に必要な“データ”を獲得する業務の設計が必要となる。つまり、「データ中心型業務プロセス」へのパラダイムシフトが求められるのだ。
このように、データドリブンマネジメントを実践するには、AIなどのテクノロジーだけでなく、必要なデータの整備、データに基づいて意思決定する業務プロセス設計と組織文化が不可欠である。それを前提としたうえで、野村氏は次のように続ける。
「データドリブンマネジメントは組織や人の活動・行動をデータ駆動型に変える取り組みであり、大胆なトランスフォーメーションが求められます。最も重要なのは人の意識変革、役割定義や評価制度なども含めた組織変革であり、それはマネジメント変革そのものです」
実績や経験といった過去を振り返りながら経営をかじ取りする「バックミラー経営」から脱却し、自社が進むべき道筋をたしかに見据えながらマネジメントする予測型経営へ。リッジラインズは、ドライバーである経営者の横のナビゲーターシートから、その変革を支援していく。
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