
「モノからコト消費へ」の転換とともに、非デジタルネイティブ企業でも重要性が増しているカスタマーサクセス。だが、明確な目的を持たず、専門チームを設けただけで「対策は済ませた」と安心している経営者も少なくない。重要なのは、顧客の変化に関する情報を全社員で共有し、カスタマーサクセスを「企業文化」として根付かせることである。
獲得したお客様は会社全体の大切な資産
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)やサブスクリプション型サービスを提供するデジタルネイティブ企業にとって、解約率の増加やNRR(売上継続率)の低下はビジネスの存続に関わる死活問題だ。苦労して獲得したユーザーをつなぎ止めるカスタマーサクセスの重要性は、ほとんどの企業が十分に認識しているはずである。
また、近年「モノからコト」への消費行動の転換とともに、非デジタルネイティブ企業がサブスク型サービスを開始し、カスタマーサクセスの専門チームを設ける動きも広がっている。デジタルネイティブ企業の取り組みを研究し、未経験ながらも手探りで「ユーザーを成功に導く」ために試行錯誤を重ねているようだ。
だが、いずれの企業においても、「根本的な取り組み方に問題があり、十分な成果が上がらない企業も少なくないようです」。そう語るのは、カスタマーサクセスプラットフォームを提供するGainsight(ゲインサイト)日本法人、代表取締役社長の絹村悠氏だ。
「多くの日本企業において、カスタマーサクセスの専門チームを設けず、新規顧客の獲得から既存顧客のフォローまで、すべて営業担当者がやらざるをえない状況になっています。これでは既存顧客への対応が、営業担当者の経験や業務量に依存して属人化してしまいます。既存顧客との関係性が組織の資産とならず、個人に依存することが成長の妨げとなっています」(絹村氏)

代表取締役社長
絹村 悠氏
Haruka Kinumura
1978年生まれ。大阪市立大学卒業後、日本ヒューレット・パッカード(現日本HP)に入社。2016年にはTableau Japanに入社、日本におけるデータ活用を中心に据えたデジタル・トランスフォーメーションを推進。直近ではセールスフォース・ジャパンで、執行役員 Tableau事業部 コーポレート営業本部 本部長を務めた後、2022年Gainsightに入社、代表取締役社長に就任
営業チームとカスタマーサクセスチームといったように、明確な分業体制を敷いて、それぞれの役割に専念できるような組織づくりが不可欠なのだ。
ただし、「専門チームさえつくればいいというものでもありません。会社全体で『カスタマーサクセスのゴールを何にするのか』を明確にし、活動に意味を持たせることが重要です。解約防止をゴールにする場合と、NRR(売上継続率)の最大化や、顧客主導型の成長(CLG・Customer-led Growth)の実現をゴールにする場合では、カスタマーサクセスチームの役割も大きく変わってきます」と絹村氏はアドバイスする。
さらに、「カスタマーサクセスは専門チームに丸投げすればいいというものではなく、全社を挙げて取り組むことが大切です」と絹村氏は言う。
「獲得したお客様は、営業やカスタマーサクセスチームだけでなく、会社全体にとって大切な資産です。その資産をしっかり守るためには、組織全体で『お客様の成功』をサポートしていかなければなりません。すべての社員がカスタマーサクセスの重要性を認識し、お客様の変化を察知して自発的に行動するような“企業文化”を根付かせることが重要なのです」
すべての社員が顧客の変化を察知できるようにするには、そのための情報共有が不可欠。Gainsightのカスタマーサクセスプラットフォームは、まさにそれを実現するソリューションだ。