2つ目の「“攻めのSaaS”における投資効果」については、SaaSプラットフォームの多くはサブスク型で提供されており、一定期間試した上で導入可否を決められるのが強みの一つだ。最近ではマーケティングやカスタマーサクセスを支援するツールも増加しており、まずは導入して効果を検証してみてはいかがだろうか。
“攻めのSaaS”で大きな進化を遂げるのは
“攻めのSaaS”の一つで、ここ数年、大きな進化を遂げているのがEC構築のためのプラットフォームだ。
「米国では、自動車メーカーや量販店などの大企業が自社ECサイトを構築するための基盤として、SaaSを利用する動きが広がっています。ショップのデザインや顧客の動線管理といった、従来はできなかったあるいは十分ではなかった機能が次々と追加・改良され、スクラッチでECサイトを構築するよりも効率よく、安上がりにつくれるようになってきたからです」
この動きは日本にも波及しており、アパレルや飲食チェーンなどで自社ECサイトを構築するためにSaaSを利用する企業が増えているようだ。
自社ECサイトの本体はスクラッチで構築し、部分的な機能だけをSaaSと連携させるという方法もある。
「たとえば、アパレルショップの各店員がECサイト上で訪問客にコーディネートを提案できる機能を備えたSaaSがあるのですが、あるアパレルはこの機能だけをAPI(注)連携して、自社ECサイトのサービスを充実させています。この方法なら、開発コストを抑えつつ、スピード感を持って時代のニーズにかなったサービスをどんどん追加していくことができます」
EC関連では、自社だけでなく、サプライヤーや異業種などのサードパーティも招き入れて、独自の「マーケットプレイス」を構築する動きが加速しているのも最近のトレンドである。
一例として根来氏が挙げるのは、ある大手化粧品メーカーの例だ。美容院などに業務用の化粧品を販売するこの会社は、自社ECサイトに美容師が使用するハサミや鏡などのメーカーも招き入れ、必要な化粧品や道具がワンストップで購入できるマーケットプレイスを開設している。マーケットプレイスを構築するためのSaaSを利用したもので、今後、こうした例はますます増えていくだろう。
また、SaaSやサブスクリプション型サービスを提供する企業においては、顧客の利用状況や満足度を診断し、よりよい結果に導くカスタマーサクセスの存在が不可欠だが、そのようなカスタマーサクセスの取り組みを支援するためのSaaSプラットフォームも、CRMの拡大として発展している。
「すべての社内システムがSaaSに置き換えられるわけではありませんが、今後も利用は拡大していくでしょう」と根来氏。新たなサービスも増え続けており、何を選び、それをいかに活用するかが問われている。