半導体、電子部品をはじめ、ネットワーク、セキュリティ関連の製品を取り扱うマクニカは、創業50周年を機にパーパスを制定、サービス・ソリューション事業に舵を切った。事業成長、ビジネス領域の拡大に伴い、多様な顔を持つようになる中で、原点に立ち返り、存在意義であるパーパスを再定義する必要があったからだ。苦心の末にでき上がった「ならでは」のパーパスは、社内に浸透し、社員のモチベーションアップ、行動変容にもつながっている。進化するマクニカについて紹介する3回シリーズの第1回をお届けする。
「我々は何者なのか」
パーパスを通じて再定義
「マクニカは、世界中の最先端のテクノロジーをどこよりも早く見つけ出し、見極め、それらに市場や顧客の要求に応じた技術的な付加価値を加えて、価値の高い製品に育て提供しています」。そう説明するのは、同社の代表取締役社長、原一将氏。
マクニカは半導体商社として1972年に創業。2022年3月期は前期比で大幅な増収増益となり、今期もそれを上回る勢いで進捗している。
創業50周年の節目に当たる22年2月に、マクニカはパーパス(図表)を制定し、社内外に公表した。その狙いについて、原氏は次のように語る。

「マクニカは、半導体やネットワーク、サイバーセキュリティ、AI(人工知能)、製造業DX(デジタル・トランスフォーメーション)、スマートモビリティなど、多くの事業を手掛けています。今後もデジタルヘルスケアや再生エネルギーなどのサーキュラーエコノミーに挑戦していく中で、マクニカとは何者なのか、何を得意として、地球や社会から見てどのように貢献できる存在なのか、強みの源泉、実現したい未来や志などについてしっかり定義する必要があると考えたのです」
パーパスの制定に当たっては、一橋大学CFO教育研究センター長、名誉教授の伊藤邦雄氏をブレーンとして招聘した。マクニカの歴史をひも解きながら、成長できた理由と強みを明らかにしていく議論は約1年行われ、さながらテニスの“壁打ち”のような地道な作業だったと原氏は振り返る。
「これから持続成長していくうえで、最も重要になってくるのが人的資本などの無形資産です。会社が成長しているいまだからこそ人を成長させ、イノベーションを生まなければ本当の継続的成長は望めないとも考えました。この人的資本を最大化できるのがパーパスであり、社内外にパーパスを浸透させるためにも作成段階から、私たち『ならでは』のオリジナルなパーパスになっているかという点に腐心しました。社員一人ひとりがそれに共感、納得、腹落ちし、『ワクワク』を感じながら、高いモチベーションでやってみようという、行動変容につながるようなパーパスをとことん追求しました。これは伊藤先生からのアドバイスでもあります」(原氏)
結果として、でき上がったパーパスには、社会課題や社会貢献といったキーワードが含まれていないが、マクニカの社員が日々の判断や行動に迷った際に立ち返る価値観をまとめたコアバリューである「T.E.A.M.S.」*1や、常に挑戦心を持った開拓者「ファーストペンギン」であり続けるなどの要素が盛り込まれ「むしろマクニカらしさが出ていて、オリジナリティがある」という評価も多かったという。