それが、B&DXが提唱する“人財X(トランスフォーメーション)”だ。安部氏によると、“人財X”の実現には「心」「技」「体」の3つの要素が不可欠であるという。
「『心』は『意識の改革』、『技』は『人事制度の改革』、『体』は『行動を変える仕組みづくり』です。この3つが欠けることなく実践されてはじめて、挑戦意欲や変革意欲を持った人財を育成することができるのです」
「意識の改革」とは、従業員に自社のパーパスや戦略を自分事として認識させることだ。
トップが従業員に対して積極的にメッセージを発信し、各部門やチームにおいては、上長と従業員が1on1などの対話を繰り返すことで、「自分たちの会社は何のために存在するのか。それは日々の業務とどのようなつながりがあるのか」といったことを腹落ちしてもらうのである。
「『意識の改革』に取り組んだ製造業のB社では、社長が社内向けにブログを開設し、動画配信やチャットグループへの参加、社内ラジオの開設など、みずからの想いを積極的に発信したことで、自分の仕事に意義を感じる従業員が増えたそうです」と安部氏は語る。
日本は“人財X”の効果が最も見込める国
「人事制度の改革」についても、単に制度設計を見直すだけでなく、パーパスや経営戦略と人事制度をいかに結び付けるかが重要だという。
「パーパスや経営戦略を起点として、それらの実現のために必要な人財像を描き、その人財を採用・育成するにはどのような人事制度を採り入れるべきかという順序で、具体的な制度にまで落とし込んでいくのです」と安部氏。
一般に日本企業は、求める人財像が明確に定義できておらず、パーパスや経営戦略と人事制度の「縦軸」が連動していないことが多い。また、採用や育成、配置、等級、評価、報酬、代謝といった人事制度の「横軸」も、「縦軸」が通っていないために、ちぐはぐになってしまう傾向が強いようだ。
「『縦軸』がしっかりと定まれば、おのずと人事制度間の整合性も取れるようになります」と安部氏はアドバイスする。トライアングルの中でも特に重要なのが、「行動を変える仕組みづくり」である。
自社のパーパスや経営戦略を発信し、それに基づく人事制度に変えたとしても、従業員の意識や行動に大きな変化が起こらないこともある。
「年功序列や終身雇用といった古い制度や習慣、考え方は、あまりにもしっかりと根付いているので、そう簡単に拭い去ることはできません。頭ではわかっていても、行動が伴わないことがよくあるものです」(安部氏)
そこで、従業員の自発的な行動を促す仕組みや、行動内容をモニタリングする仕組み、個々人の行動を上位者が率先してほめ合う仕組みなどを構築し、「行動することが当たり前」となるような企業文化を醸成するのである。
安部氏は、「人財の挑戦意欲、変革意欲が低い日本は、見方を変えれば“人財X”の効果が最も見込める国であるといえます。途方に暮れることなく、いまからでも改革に着手してみてはどうでしょうか」と提言する。
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