米国企業の最大のオーナー
“見えざる革命”は(拙著によって)初めて記録されてから15年経った今日、万人の目に見える形でアメリカの企業所有形態を変貌させつつある。20のトップ年金基金(そのうち13は州、市あるいは非営利法人関係職員のものだが)は、アメリカの上場企業の自己資本の約10分の1を保有している。すべてを合わせると、機関投資家は――ということは主に年金基金ということになるが――米国の大企業(そして多くの中規模企業)の普通株の40%近くを押さえているのだ。最大にして最も成長の早い基金である公務員の基金は、もはや受け身の投資家であることに安んじてはいない。次第に投資先の会社への発言権を――例えば、役員の任命に対する拒否権、経営者の報酬、枢要な定款の改訂などについて、強く要求するようになってきているのである。
同じように重要でありながら、まだたいていは見逃されていることに、年金基金が米国の大企業の中・長期の負債の40%ほどを握っていることがある。かくして、これらの機関投資家はアメリカの企業界における最大の所有者(オーナー)であることはもちろんのこと、最大の貸し手(レンダー)にもなっているのである。財務管理の教科書が何年となく強調してきたように、貸す側の力はオーナーの力に匹敵するばかりでなく、時としてはそれ以上に強いのである。
年金基金が支配的な所有者として、また貸し手として興隆してきたことは、経済史において最も驚嘆すべき力の交替の1つを表すものである。最初の近代的年金基金はゼネラル・モーターズによって1950年に設定された。その後40年間で、年金基金は全部で2.5兆ドルの資産をコントロールするようになり、それは普通株と定額収入証券とにほぼ同額ずつ配分されている。これらの資産は、人口統計的に見ても、少なくとも向こう10年間は相当な勢いで伸びることは保証されている。長期的な不況が到来しない限り、年金基金は1990年代を通じて毎年1000億ドルから2000億ドルを新しい資源に向けて投資せざるを得ないと見てよいだろう。