Design for CXが特徴的なのは、CSLが25年以上にわたってコンタクトセンター運営やITサポートのアウトソーシング事業で得たノウハウや技術を活かし、消費者に寄り添うためにVOC(voice of customer:顧客の声)を重視したソリューションを提供する点だ。

 6カテゴリーの一つである「VOC分析」では、特にその特徴が表れている。同社は、VOCに含まれる、顧客が製品やサービスに感じる「困った」の声を、「不備」(使えない)、「不便」(使いにくい)、「不信」(違和感がある)に分類。それぞれに適切な対処を行い、カスタマージャーニーに存在する「不」の払拭につなげる。

 この3つの「不」の抽出には独自開発したAI(人工知能)ツールも活用。電話やメール、SNSも含む複数チャネルの膨大なVOCをAIで分類・数値化。分析技術を持たないスタッフでも理解できるように可視化する。

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多様なチャネルから得た顧客の声(VOC)を分析して顧客の本音を読み解き、課題を抽出。組織全体でCX活動を推進していく

 コンサルティングにおいては、特定のフレームワークに当てはめるのではなく、顧客接点に精通する強みを活かし、クライアント企業と共創関係を築きつつ伴走支援を行う。全社的な変革が必要となる場合には、同社主導でタスクフォースを結成し、組織横断でCXを改善する体制をつくる。田辺氏は「CXにゴールはありません。世の中の変化とともに、顧客の考えも生活も変わり続けます。だからこそ、企業が自走して優れたCXを提供できる段階を目指して支援することが重要です」と説明する。

顧客の声を中心に据えて
組織全体でCX向上を目指す

 Design for CXはすでに多くの企業で実績を上げている。ある大手製薬企業では、競合の国内市場参入前に、CX向上による差別化を進めたいと考えていた。しかし社内に知見がなかったことから、Design for CXを導入。CSLはクライアント社内にタスクフォースを組成し、メンバーにCX研修を実施。CXを重視する企業としての共通意識を醸成し、組織横断によるCX向上の取り組みを定着させた。また、顧客(患者ではなく医師)のCX向上を競合との差別化ポイントとしてとらえカスタマージャーニーマップを作成し、CXを向上させる因子を明確化した。さらに、プロジェクト終了後もCX向上のために自走できる体制を、社内に定着させたという。

 ある大手機械メーカーは、市場のコモディティ化に対してサービスでの差別化を目指したが、従来のプロダクトアウト志向からの脱却が課題となっていた。さらに各部門で異なる顧客を抱えていたため、全社でCXの目線を揃えることが難しいという問題もあった。そこで、顧客満足度の調査方法を見直したうえでサービス改善のキーワードを特定して、合計111個の改善施策を立案した。その結果、NRS(net repeater score:顧客の継続意向)スコアが7.8%から15.0%へ向上したという。

 社会も人の行動も変化していく中で、企業は今後CXをいかに高めていくべきか。大濱氏は「VOC、顧客の声を中心に据え、経営陣から現場まで組織全体でCX向上に取り組む姿勢はどの企業でも欠かせません」と話す。田辺氏は、CX向上に当たって重要なのは「人の本質に着目すること」だと言う。

「社会の変化、人の価値観の変化を理解しないことには、優れたCXは提供できません。また、CX向上には欠かせないデジタル技術は、使い方次第でユーザーに悪影響も与えます。だからこそ、CXに向き合う前提として、人を深く理解する姿勢は必須だと思うのです」(田辺氏)

 Design for CXはこれからも進化していく。2023年度中にはアップデートも予定している。

「当社が持つ顧客接点のノウハウを形式知化し、CXのみならずEX(従業員体験)も含めたあらゆるエクスペリエンスを支援する『エクスペリエンスマネジメント』の仕組みへ昇華させていきたいと考えています」(大濱氏)

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