サマリー:インフレなどで直接材の調達コストが上昇する中、削減余地が大きく残されている間接材料費の統制に取り組む企業が増えている。三菱重工業は多額の間接費を削減する取り組みを進めている。その実例を紹介する。

急激なインフレによって直接材の調達コストが上昇する中、削減余地が大きく残されている間接材料費の統制に取り組む企業が増えている。三菱重工業は、グローバル全体の間接費支出を可視化・分析できるプラットフォームを導入。経営層および現場へのリポートを通じて調達先の集約や集中購買を促し、多額の間接費を削減する取り組みを進めている。その実例を紹介する。

グループ全体の間接費支出を可視化する

 コロナ禍はようやく落ち着いたものの、原油高やロシアのウクライナ侵攻などの地政学リスクも重なり、資源価格の高騰が続いている。その影響は直接材の調達価格にも及び、多くの業界で原材料や部品コスト増加に頭を抱えているようだ。

「直接材の調達コスト削減は設計仕様や製造プロセスの見直しなど多くの時間が必要になり、調達部門でできる削減余地も限定的になりがちです。その一方、間接費については、まだまだ減らせる余地が大きく、5年前からグローバルで間接費購買統制の取り組みを進めています」

 そう語るのは、三菱重工業(三菱重工)のバリューチェーン本部SCM部部長、白神晋氏。売上高4兆円超を誇る三菱重工。事業規模が大きいだけに、グループ全体で支払っている間接費も年間3000億円に上る。調達先の集約や集中購買などを実施すれば、相当な額の間接費を削減できるはずだ。

 しかし、「以前は、グループ各社がどの調達先から、何を、いくらで調達しているのかということがまったく見えませんでした。状況が把握できなければ、手の打ちようがありません。そこで、間接費の支出状況を可視化できるプラットフォームを導入することにしたのです」と白神氏は説明する。

 三菱重工が導入したのは、米国のテック企業Coupa(クーパ)が提供するBusiness Spend Management(ビジネス支出管理、BSM)プラットフォームである。「一言で言えば、直接費や間接費など、企業のあらゆる支出を一元的に管理できるプラットフォームです。調達業務をデジタルで効率化するだけでなく、蓄積された取引データをさまざまな切り口で分析できるのが特徴です」と説明するのは、Coupa日本法人代表取締役社長の小関貴志氏である。

Coupa
代表取締役社長
小関貴志
Takashi Ozeki

 一般的に間接材の調達は、各事業部門やグループ会社がばらばらで行い、担当部門も多種多様である。これが、グループ全体の間接材調達の状況を見えにくくしている大きな原因である。すべての部門やグループ会社が同じプラットフォームで調達するようになれば、取引データが集約され、全体の取引状況が可視化されるのだ。

「三菱重工には31のSBU(戦略的事業評価制度における事業単位)があり、グループ会社は世界で約300社に上ります。そのすべての取引を見える化するには、グローバルに利用実績のあるCoupaが最適でした」と語るのは、導入に携わった三菱重工SCM部調達企画グループ主席部員の小川亮氏。

 小川氏は、導入に当たって複数のソリューションを検討。その中でも「導入費用がリーズナブルであることに加え、社内ユーザーにとって使いやすいプラットフォームであることが選定の決め手になりました」と明かす。