サマリー:障害者雇用の中でも近年、増え続けている精神障害者の雇用。パーソル総合研究所が行った調査から見えてきた精神障害者が活躍人材となるための3つのポイントを研究員の金本麻里氏に聞いた。

精神障害者の雇用が義務化されてから5年。大企業や都心部の企業を中心に受け入れ先は増えている。だが、精神障害者に対する無意識の偏見や理解不足、雇用ノウハウの不足などから、活躍を促せず、離職などを招くケースも少なくないようだ。精神障害者雇用にはどのような課題が立ちはだかり、いかにすればその壁を打ち破れるのか。パーソル総合研究所による企業調査の結果から探った。

746社を対象に精神障害者雇用の実態を調査

パーソル総合研究所 シンクタンク本部リサーチ部研究員 金本麻里氏

「障害者が地域の一員として共に暮らし、共に働くこと」を当たり前にするため、国が定めた障害者雇用義務。かつては身体障害者や知的障害者などが対象であったが、2018年4月に精神障害者も対象に加えられた。

 それから5年。ESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)など社会的な背景もあり、大企業や都市部の企業を中心に精神障害者雇用が広がっている。

「障害者雇用義務に対応して採用する人材のうち、およそ半数が精神障害者となっています。民間企業による精神障害者の法定雇用率は、現行の2.3%から2024年4月には2.5%となる予定で、精神障害者雇用は、今後増えるでしょう」と語るのは、総合人材サービスを提供するパーソルグループのシンクタンク、パーソル総合研究所研究員の金本麻里氏である。

 一方で、採用はしたものの、精神障害者に十分な活躍の場やキャリア形成の機会が与えられず、離職を招いてしまう企業も少なくないようだ。その背景には、障害者雇用義務化から年数が浅く、事例の調査・報告も少なく、状況を把握しにくい課題がある。

 そこでパーソル総合研究所は、2023年1月から2月にかけて「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」を実施。一般企業、特例子会社(障害者の雇用促進と安定を目的として設立される子会社)など計746社を対象に、精神障害者雇用の実態と課題について調査した。