ミスマッチをなくして定着と活躍を促す
パーソル総合研究所は、今回の調査結果を踏まえ、「精神障害者の定着・活躍を促す[人事施策]のポイント」(図表)をまとめている。精神障害のある人材の定着と活躍を促すには、①採用時のマッチング強化、②受け入れ先現場への支援、③障害者個人への支援、この3つが重要だという。
「まずは、『採用時のマッチング強化』です。企業側が求める人材像や、どんな仕事を任せたいかを明確に伝え、それが応募者の要望とマッチしているかどうかを確かめることが重要です。日によって気持ちや考え方が大きく変わる人もいるので、なるべく面接の回数を重ねたり職場見学や実習などを取り入れたり、対話を深めながら意思疎通を図ることをお勧めします」
また、障害の度合いや家庭の事情などによっては、「週何日通院する必要がある」とか「午前中のみの勤務を希望」などの配慮が必要となる。そうした合理的配慮についても応募者としっかりとすり合わせ、書類にまとめて合意しておきたい。合意が得られたら、まずは数カ月程度のトライアル雇用を行う。これにより仕事の内容等が本当にマッチしているかどうかを確かめながら、正式採用に至るのが望ましい。
採用が決定したら、2つめの「受け入れ先現場への支援」である。
「雇用のノウハウ不足が課題であることはすでに述べた通りですが、現場の管理職は精神障害者を受け入れた経験がまったくないケースがほとんどです。どうしていいかわからない現場を、人事部門はしっかりフォローして、適切な管理を実践してもらう必要があります」と金本氏。
トラブルへの対応方法などを明文化し、イレギュラーなトラブルが発生した場合には人事部門や外部の専門家などがフォローアップする仕組みを用意しておくのも有効だろう。
「今回の調査で管理職や同僚の対応のポイントとして浮かび上がったのは、『平等な対応』の重要性です。気遣いも大切ですが、それが高じて本人が自信をなくさないよう配慮が必要かもしれません」と金本氏はアドバイスする。
そうした不満や不安を抑えるためには、3つめの「障害者個人への支援」も不可欠である。個人的なことでも話せるような、定期的な相談やカウンセリングなどの場を設けるのも方法だ。
「今回調査した中で、とある特例子会社でうまくいっている例もありました。具体的には、体調や業務、就業環境などについての不安要素を書面や面談で報告してもらい、都度取り除くきめ細かな対応で、精神障害者の離職率をわずか3%に留めることができていたのです」と金本氏は成功例を紹介する。
今後、労働力不足や社会的な潮流の中で、企業は精神障害者雇用としっかり向き合う必要がある。今回の調査は、その第一歩である。金本氏は「パーソルグループが目指す『“はたらくWell-being”創造カンパニー』を実現するため、今後も独自の調査・研究に基づく有益な提言を行っていきたい」と語った。
株式会社パーソル総合研究所
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精神障害者雇用を一歩先へ
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