
競争優位の原動力は、製品からデータへと移行している──データを起点とした競争戦略の新しい概念を記した『デジタル競争戦略 コンサンプション・エコシステムがつくる新たな競争優位』(原題:The Future of Competitive Strategy ダイヤモンド社)が上梓された。デジタルテクノロジーを駆使して企業の事業変革や社会課題の解決に挑むグローバル企業 NTTデータが、スイスのビジネススクールIMDのモハン・スブラマニアム教授の著した本書を、日本に紹介するために翻訳した。プロジェクトを主導したコンサルティング&アセットビジネス変革本部副本部長の野崎大喜氏に、本書の翻訳プロジェクトに込めた思いと、いま日本企業が身に着けるべきエッセンスを聞いた。
フレームワークで見えてくる
自社のDXの進捗度
──企業戦略やデジタル変革の研究者であり、IMD教授のモハン・スブラマニアム氏との出会いを経て、なぜ、本書を翻訳することになったのでしょうか。
NTTデータは、デジタルがビジネスを高速で駆動させる激しい変化の中で、将来の在りたい姿が見定めにくい企業をご支援するために日々検討を重ねています。当社が関わるプロジェクト数は常時数千にもなりますが、こうした状況下で変化をキャッチアップしようとする企業に対する我々のコンサルティングにばらつきが生じては、提供する価値に影響しかねません。
そこでコンサルティングの品質を整えるため、NTTデータでは2年ほど前から「Foresight Design Method」を掲げて活動しています。これはさまざまなデジタルテクノロジーやデータがビジネスや社会に影響をもたらし、我々の活動すべてがアナログからデジタルにシフトしていく必然の流れを、当社の支援方針に重ね合わせたものであるともいえます。
このForesight Design Methodを策定していく過程で、当社の代表取締役副社長(当時)の山口重樹がDX(デジタル・トランスフォーメーション)の研究をしている方々の理論に触れる中で、デジタル活用による事業変革の進捗度を知り、高度化の筋道を探ることができる斬新なフレームワークを提示するIMDのモハン・スブラマニアム教授を知るところとなりました。
さっそくコンタクトを取ってディスカッションを重ねていく中で、我々の考え方と教授の提唱しているものが、とても近しいことが分かったのです。
また、その方法論やフレームワークが、日本企業の現状の把握と、どのような方向に向かおうと努力しているのかを明らかにするのにとても役立つと考え、教授の原著『The Future of Competitive Strategy』を日本語に翻訳して、多くの日本企業の経営を担う方々に共有しようと考えました。
──本書にはこれまでにない着眼点で、新しい競争戦略の概念が書かれています。そのポイントは何でしょうか。