ウェブサイトの速度が遅いと顧客はいらいらして、時には購入に至らずにログアウトしてしまう。これは当然のことだろう。研究者らがこの影響を定量化し、わずか1秒の遅れが売上げへの大きな打撃となることを明らかにした。

 研究者らは、国際的な大手アパレルブランド7社の2年分の日別の売上げと訪問者のデータ、および衛生用品ブランドの特定のウェブサイトページのデータを入手した。そして、デジタルエクスペリエンスを管理する企業、キャッチポイントが提供する、詳細なウェブサイトのパフォーマンスデータと照らし合わせた。

 その結果、ウェブサイトのロード時間が10%長くなると、訪問者1人当たりの売上げが平均で2.4%減少し、総売上げは4.2%減少していた。また、サイトの遅延を経験した顧客は、その日のうちに再訪問する確率が低くなった。

 訪問者は支払い時の遅延に最も神経質になったが、それはその作業の取引的な性質と、彼らをつなぎとめる体験的要素に欠けており、支払いには不安が生まれることが原因だと考えられる。その影響は、デスクトップよりもモバイルのチャネルでやや大きかった。

 また、ウェブサイトのパフォーマンスが低下したために失われた売上げは、その後の数日で回復することはなかったと思われる。

 インターネットの速度低下は避けられないものだが、小売業者はサイトの平均速度を改善するために、対策を講じることができると研究者らは指摘している。サードパーティのコンテンツプロバイダーはロード時間を大幅に増加させるので、小売業者はサードパーティを慎重に選び、重要な支払いの段階ではその数を制限すべきだ。

 同様に、「小売業者は、顧客からの重要情報については提供・収集のみに留めることで、支払いページを簡素化できる」と研究者らは述べている。「アップルペイやグーグルペイなど、より迅速な支払い方法を提供すれば、支払いにおける葛藤や、顧客が感じる待ち時間を減らせるだろう」


研究について:
"Need for Speed: The Impact of In-Process Delays on Customer Behavior in Online Retail," by Santiago Gallino, Nil Karacaoglu, and Antonio Moreno (Operations Research, May-June 2023)

前田雅子/訳
(HBR 2023年7-8月号より、DHBR 2024年1月号より)
Even Tiny Website Slowdowns Can Be Costly
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