“人事”だけに閉じない経営視座での人的資本経営の推進

「変革が成功している企業の経営者の方々とお話をさせていただくと、皆さん総じて事業だけでなく、人事や文化にも非常に強い関心を持たれているという特徴があると感じます」(高橋氏)

 人事変革の2周目の悩みの原因、それは、人的資本経営の推進を人事部門だけで行う“人事ごと”にしてしまっていることにある。

 経営層からの指示を受けていたとしても、人事制度改革や人事施策開発といった人事に関する施策を、人事部門だけで完結させることが困難な時代になってきているのだ。企業としての大きな変革使命を背負っている経営層が起点となり、人事部門が中心となって事業部門と有機的につながりながら人事変革を進めていくことが求められるようになっている。

 実際、従業員はなかなか前向きには動いてくれないものだ。電通が2022年、大企業の従業員600人を対象に行った「企業変革に関する従業員意識調査」ではそれが浮き彫りになっている。

● 自社の企業変革に前向きな「変革推進層」は、約20%に留まった。
● 変革に対して「何も行動していない」従業員(38.3%)が、「何らかの行動を起こしている」従業員(32.3%)を上回った。
● 約90%の従業員が、自社の変革に対して「何らかの不安」を感じている。

「このようなシチュエーションにおいては人事部門だけが頑張るのではなく、経営層のリードの下、人事部門が中心となった全社的な取り組みが必要になります。大きな変革のプロセスやストーリーを描いたうえで、人事施策を社内に展開していくことが重要です」(高橋氏)

 では、何からどう手を打てばいいのか。