サマリー:電通デジタルでは、既存事業の進化と新規事業の創造を両輪で進める独自のアプローチで、大きな変革の実践と定着につなげる伴走型支援で実績を挙げてきた。その仕組みを体系化した自走支援でも成果を出している。

社会課題や顧客価値を基点とした革新的な事業創造を支援するために電通デジタルが2023年1月に立ち上げたBIRD部門。同部門では、同社がこれまでクライアント企業の変革支援で積み上げてきた実績を体系化した伴走型・自立支援型のコンサルティングによって、部分的な効率化に留まらない、大きな変革の実践と定着を強力にサポートしている。

事業創造のインハウス化を仕組みとしてインストール

 デジタル時代にふさわしい経営への変革が求められる中、IT基盤の構築やDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進組織といった“箱”の整備は各企業で進みつつあるものの、部分的な業務効率化に留まっているケースがほとんどだ。

 その要因について、電通デジタル BIRD部門ビジネスクリエイション事業部事業部長の清水正洋氏は、「箱を使って何を意思決定すればいいのかが定義、共有されていないため、変革の実践と定着に至っていないと考えられます」と指摘する。

 電通デジタルでは、社会課題の解決や新たな顧客価値の創造を意思決定の基軸としながら、既存事業の進化と新規事業の創造を両輪で進める独自のアプローチで、大きな変革の実践と定着につなげる伴走型支援を行っている。

 大手企業では、新規事業開発を既存事業と切り離して進めることが多い。だが、これを続けているだけでは既存事業側に何の変化も起こらず、大きな変革は実現できない。清水氏は、「事業創造を既存組織で行うか、別組織で行うかは方法論の一つにすぎません。重要なのは、正しい仕組みと意思決定プロセスを組織にインストールすることで新規事業を素早く成功させ、それを拡大・拡張することで、事業全体を変革していくことです」と述べる。

 ビジネスクリエイション事業部では、戦略からオペレーションまでの各レイヤーにおいて、事業の創出、収益化、拡大を一気通貫で支援してきた電通デジタルの実績を仕組みとして体系化し、クライアント企業にインストールしている。「単にスキルやノウハウを移植するだけでなく、クライアント企業自身が高いクオリティとスピードで事業創造をインハウス(内製)化できるようにするためです」(清水氏)。

 そうした支援事例の一つが、ブラザー工業における新事業モデルの開発である。