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KITAによるモチベーション
実に多くの論文、書物、講演、研究会で「どうすれば思うとおりに社員を働かせることができるか」という泣き言めいた問題提起がなされる。
モチベーションの問題を扱う心理学はきわめて複雑であり、実際いままでにある程度の確度をもって解明された事実もごくわずかである。「机上の空論が知識を凌駕する」という何とも情けない状況であり、そこで次々に新しい万能薬が売り出されて評判を博するようになる。しかもその多くがアカデミズムのお墨つきである。
本稿がこの万能薬市場に水を差すことはなかろう。ここで説明されている考え方は、企業をはじめ、その他の多数の組織で試されてきたものであり、先ほど述べた状況を正すうえでも有効と考える。
マネジャーたちを相手にこの問題について講演すると、聴衆はかならず、即座に役立つ実践的な解を求めてくる。そこでまず、人間を動かす簡単で実践的な方法から話を始めたい。
だれかに何かをさせる、最も簡単かつ確実で、直接的な方法とは何だろうか。それは一言「やってくれたまえ」と言えばよい。しかし「嫌です」と返事をされたら、心理学者に頼んで、なぜ抵抗を示すのか、その理由を探らなければならない。
次は、命令すればよい。しかし「意味がよくわかりません」という返事であれば、コミュニケーション技術の専門家に頼んで、あなたの真意を伝える方法を学ばなければならない。割増金を出してはどうか。しかし、ことさら断るまでもなく、割増金制度の設定と運営が面倒でやっかいなことは、よく知られている。では、手取り足取り教えてはどうか。しかし研修にはコストがかかる。もっと簡単な方法はないものだろうか。