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優れたマネジャーには権力欲求が不可欠
何が、またいかなる動機が、優れたマネジャーを生み出すのだろうか。これは非常に広範囲にわたる問題である。優秀なマネジャーは成功者であると言う人がいるかもしれないが、たいていの研究者やビジネスマンは、成功した中小企業の経営者が何に動機づけられているのか、よくわかっている。
その成功のカギは、心理学者が「達成動機[注1]」と呼んでいるもの、すなわち、いままで以上に優れて、かつ効率的に物事を達成したいという願望である。成功を望む人間にはいかに達成動機が不可欠であるか、これを説明する書物や研究論文は枚挙に暇がない。
では、この達成動機は優れたマネジメントにどのような影響を及ぼすのだろうか。努めて効率的でありたいと強く求める人は、なぜ優秀なマネジャーへと成長するのか、実のところ、その根拠を理論的には説明できない。
心理学者たちが達成動機の動機を定義し、これを測定しているため、だれでも物事を達成したいという欲求を失ってはならないと言わんばかりに聞こえるが、達成動機による行動が、必ずしも優れたマネジメントにつながるとは限らない。
たとえば、達成動機に突き動かされている人の場合、まず先に自身の進歩を考えるため、何でも自分でやりたがる。そして、自分の成果について具体的なフィードバックを短いサイクルでほしがる。なぜなら、いかに自分が好成績を上げているかをはっきりさせたいからだ。
ただし、とりわけ大規模で複雑な組織のマネジャーの場合、成功に必要ないっさいがっさいの仕事を自分の手でやり切れるわけではない。部下たちを動かし、組織のために働かせなければならない。しかも、それぞれの仕事が大勢の人間に分散しているため、マネジャーは各人にタイミングよくフィードバックするといったことなど考えず、てきぱき物事を進めていく意志がなければならない。
マネジャーの仕事は、一人で優れた成績を上げる者よりも、うまく人を動かせる者に向いているようだ。したがって、モチベーションという点からすれば、達成動機よりも権力動機[注2]の強い人がマネジャーとして成功すると期待できる。