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革命が成功するのは新興勢力の勝利ではなく旧体制の自業自得にある
各国の政府は無意識のうちに革命を恐れている。政情が不安定になると「新しい体制に取って代わられるのではないか」との不安が必ず頭をもたげてくる。新しい権力構造、新しい秩序が幅をきかせるようになるのではないかというのだ。
だが、内乱の歴史をローマ時代から現代まで簡単にたどっただけでも、このような恐れや不安は根拠に乏しいことがわかる。革命が成功することは実に稀なのだ。そのうえ成功例を見ても、原因はほぼ例外なく旧体制の失政にあり、革命勢力の理念が優れていたからではない。
1917年のロシア革命にしても、皇帝が第1次世界大戦や内政への対応を誤ったのが伏線にあって、けっして共産主義というイデオロギーが勝利の原動力となったのではない。79年のイラン革命も同様だろう。革命勢力が政権を奪取できたのは、パーレビ王朝の腐敗や失政によるのであり、イスラム原理主義者による統治が待ち望まれていたわけではないのだ。
同じことがビジネスの世界にも当てはまる。リーダー企業は事あるごとに不安にさいなまれている。新しい技術やビジネスモデルが台頭して、自社の競争力や製品が時代遅れになってしまうのではないかと気を揉んでばかりいるのだ。
しかし、強大な支配力を誇ってきた企業が新興勢力の前に屈した場合、身から出たさびであることが多い。脅威をいつまでも見過ごし、強大化を許してしまったのかもしれない。あるいは、革命の波に乗り遅れまいと焦るあまり、経営資源をむやみに浪費して、既存の強みを維持することも、新しい強みを手に入れることもできなかったのかもしれない。
残念なことに、いかに如才のない企業でもこのような醜態を呈してしまう場合がある。モトローラがそうだ。かつてGSM方式(ヨーロッパのデジタル方式携帯電話システムの標準規格。現在、世界で最も利用者数が多い)への対応を後回しにしたため、携帯電話市場の支配権をノキア、エリクソンに譲り渡さざるをえなくなった。半面、AT&Tのように、ブロードバンド技術の採用を急ぎすぎたために、組織に大きな歪みを生み、名声を大きく失墜させた例もある。
私は5年以上にわたって、リーダー企業100社以上の戦略を追ってきた。競争システム、ビジネスモデル、技術などを脅かされ、大きな危機に直面した企業ばかりである。それらの企業で、革命を完全に無視したり、徹底的に打ちのめそうとしたりすることで、危機をうまく乗り越えられた事例は皆無に近かった。