また、CXの向上を目指して会員向けサービス「myTOKYOGAS」のシステム開発の内製化に取り組んでいた東京ガスには、スクラム開発(アジャイル開発の手法の一つ)を実践するための体制整備と人材開発の支援を行い、継続的に人材が育つ土台を整えた。
こうした事例には枚挙に暇がないほどで、STUDIO ZEROの2023年9月期の売上高は前期比5倍以上に急拡大するなど、プレイドの新たな成長エンジンとなりつつある。
ホモ・ルーデンスとして変革を本気で楽しむ
STUDIO ZEROが短い期間にこれだけの実績を積み上げてこられたのは、変革者としてのDNAを持って生まれた集団だからだ。
「大きな変革は未知への挑戦から生まれます。そして、どんな組織にも未到の領域を果敢に目指そうとする人たちがいます。そうした人たちとともに走り、よりよい社会への変革を加速させることがSTUDIO ZEROの存在意義です」と仁科氏は述べる。
So Nishina
プレイド STUDIO ZERO 代表
STUDIO ZEROの価値観やそれを反映した行動原則には、変革を成功に導くチェンジリーダーに求められる要素が凝縮されており、あらゆる組織にとって参考になる。
STUDIO ZEROの13の行動原則「零道」(ぜろみち)の中から、その一端を紹介しよう。まず、「インパクト思考」。これは、顧客、投資家、社会にポジティブなインパクトを与える“三方よし”の発想であり、変革の先にあるミッションを達成するためにも、利益の上がる事業として成り立たせることを重視する。
次に、「信頼残高」。トラックレコード(過去の実績)が信用につながり、信用が積み重なることで信頼へと変わっていく。大きな変革は一人では成しえず、パートナーの存在が必要だ。信頼残高の多いパートナー同士なら、よりチャレンジングな課題に向き合える。
やや異色なところでは、「家族に誇れる仕事をする」。社会の最小構成単位であり、最も身近な存在である家族がその価値を認めてくれる仕事でなければ、世の中にも認められない。家族を大切にし、自分の人生を楽しむ人こそが、社会の幸福度を高められるという信念でもある。
そして、「まずは率先して自分たちがワクワクする」。顧客や生活者が喜ぶ姿、よりよい社会が実現される未来が目に浮かべば、創造的な発想や変革の熱意が湧き上がる。ワクワクした雰囲気や感情は自然に周囲に伝播し、ポジティブな変革に挑戦する仲間が増えていく。
歴史家のヨハン・ホイジンガは、現生人類は「ホモ・ルーデンス」(遊ぶヒト)であり、自由な行為としての遊びの中から挑戦意識や新たな文化が芽生えたと主張した。仁科氏はこの考えに共感を覚える。
「いまの日本に足りないのは、ホモ・サピエンス(考えるヒト)として左脳で考えることよりも、ホモ・ルーデンスとして右脳を使って自由に発想し、自分の手で未来をつくることを本気で楽しむことではないでしょうか。そういう人が増えれば日本は変わると信じて、私たちは新しいムーブメントをつくっていきたいと思います」