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大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインが複数の女優からセクハラ行為で訴えられた時、映画界は騒然となった。ワインスタインの強奪的な性犯罪行為を知って、それにふさわしい罰として私の頭に真っ先に浮かんだのは、何世紀も前のルネサンス期のヨーロッパで使われていた「恥の仮面」(豚の鼻などを模した仮面を装着させることで、犯罪者を侮辱し嘲笑した)や、映画『時計じかけのオレンジ』に出てくるような刑罰(残虐な映像を強制的に見せ、さまざまな暴力行為に対する生理的な拒絶反応を引き起こさせる罰)だった。
不正を知った時、罪を犯した人間を罰し、排除したくなるのは自然な反応である。しかし、パワー(力、権力)の社会心理学に関する研究は、そのような力の濫用を引き起こした社会システムについて深く考えることも必要であることを示唆している(もちろん、当の犯罪者を無罪放免にするということではない)。
私を含めて社会科学者は、この25年間にわたり、自分に力があると感じることで普通の市民が犯してしまう過ち、すなわち「パワーの濫用が引き起こす蛮行」とでも呼べるものを記録してきた[注1]。