4つのタイプとそれぞれの課題

 ここ数年の間に、より多くの関係者を包摂する新たな形の資本主義の到来が、さまざまな記事や論説で語られるようになった。「ステークホルダー資本主義」と呼ばれる資本主義である。

 ステークホルダー資本主義は企業を支える土台となり、関係者の利益を拡大し、長期保有株主により大きなリターンをもたらして、最終的には経済と社会全体を強化すると期待されている。企業の取締役会や経営幹部は、これまで何十年にもわたって指針としてきた株主中心のアプローチに代えて、この新たなイデオロギーに沿う形で、企業のガバナンスに「マルチステークホルダー」のアプローチを採用するよう求められている。

 筆者はこれまで、数百人に及ぶ取締役や経営幹部、投資家、ガバナンスの専門家、研究者らと対話を重ねてきたが、その中でステークホルダー資本主義の理解のされ方がさまざまに異なっていることに気づいた。この違いを認識してこなかったことが、企業内や討論の場で混乱や意見の相違を生む原因となってきたのである。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資に関する近年の論争が、まさにそれである。